「人間と環境を犠牲にして沖縄の軍事植民地状態を深化し拡大させる」――。米海兵隊普天間基地の移設について、沖縄県の仲井真弘多知事が安倍晋三首相と交わした"取り決め"は、県民の怒りと国際的な批判を呼び起こしている。普天間基地移設先の名護市辺野古埋め立てを承認した仲井真知事に対し、県議会は知事辞任を要求する抗議決議を可決した。公約に違反しながら、「公約を変えていない」とする知事の態度に「不誠実の極みであり、県民への冒涜」、「かつて、これほどまでに政府に付き従い、民意に背を向けた県知事はいない」と、激しい表現で批判と抗議を突き付けた。県外移設は、県議会議長、県内41市町村長、議長らが一致団結した「オール沖縄」の要求だった。知事を応援してきた経済人、元自民党県連顧問も「辺野古移設断固反対」を表明。ウチナーンチュ(沖縄県民)のアイデンティーと主権をかけた"魂の発言"を順次紹介する。
かりゆしグループCEOの平良朝敬氏(59)は、「観光は平和産業だ。辺野古断固反対」と語り、辺野古移設反対を掲げる名護市の稲嶺進市長を表立って応援している。同グループは、1962年設立の(株)かりゆしを中心に、沖縄かりゆしリゾート・オーシャンスパなど県内で5つのホテルを経営する。平良CEOは(株)かりゆし代表取締役会長。沖縄県では、本土大手資本が参加するリゾートホテルが多いなか、県内資本で観光ホテルをスタートさせたパイオニア。沖縄県で初の「エコアクション21認定」を取得、ホテル敷地内に農業生産法人を持ち、スローフード、地産地消をめざすなど、沖縄県のホテル・観光産業をリードしてきた。
<イデオロギーではなく、沖縄のアイデンティティーの問題だ>
――知事の埋め立て承認をどう思いますか。
平良朝敬CEO(以下、平良) 知事が辺野古埋め立てを承認したという状況を見て、我々が今行動しないと、沖縄が要塞化されると危惧しています。私は、辺野古断固反対ですし、基地を絶対に造らせてはいけません。僕は、県知事を今まで支えていましたが、埋め立て承認ということは、「県外移設」という公約の撤回です。これでは沖縄県のリーダーとしていかがなものか。CEOとして政治の場に表立って発言するのは初めてです。ましてや、これまで自民党側の応援をしてきました。反対の側を応援するのは初めてです。これは、保守革新、野党与党の関係じゃない、イデオロギーの世界を通り越していて、「本当にいいのか」という沖縄のアイデンティティーの問題だからです。沖縄の将来を決する時期、今行動しなければ一生、僕は後悔する。今が行動する時期だ。その一つの答えが、名護市の稲嶺進市長を圧倒的に勝たすこと、そのために私も全力を尽くします。
<社員の気持ちを確認しながらの行動>
――名護市長選で、現職候補の総決起大会に登壇して、支援を訴えた。そこまでする思いはなんですか。
平良 知事が不承認だったなら、必要はありません。過去の名護市長選にも直接来たことはありません。辺野古の問題があるので、「自分で考えて、きちんと人を見て入れなさい」と社員に話していただけです。しかし、今回はきちっと辺野古移設に反対する候補に入れようと、社員とも確認して行動しています。これは、けっして僕一人の気持ちではない。社員と毎週ミーティングしているなかで、みんなの気持ちも汲みとって、「よし僕は、稲嶺市長の総決起大会に出よう」という気持ちになった。200人の社員から聞き取り調査した。社員と話し合いを積み上げて、「もし承認したら行動に出ような」と確認しながら、知事が承認した段階で、ことし初めに新年会を含めて確認をしあった。みんなが「残念」、「残念を通り越して裏切られた」。この言葉しか出ない。社員の気持ちも込めて、総決起大会に登壇しました。
私は以前、辺野古移設を推進する者でした。それは、稲嶺恵一元県知事時代に「軍民共用・15年期限付き」条件のもと賛成する立場でした。そのことは、名護市を含めて、沖縄県の財産になるわけであり、15年間は我慢をして世界1危険な普天間飛行場をなくすことができればとの思いでした。ベストではないが、ベターな選択だった。が、今どうでしょう。V字型滑走路や、空母が接岸できることが計画され、耐用年数200年、オスプレイ100機可能、まさにアジア最大の軍事基地の要塞が建設されようとしている。そのことは、永遠に基地が固定化されることになる。沖縄の財産には絶対なりません。
これまで先人たちがひもじい思いをしながら、命を賭けてたたかって守ってきた沖縄の土地、自然を破壊させてはいけません。我々責任世代として子や孫に、胸を張れる行動をとり、子々孫々まで沖縄の財産を守り続けていきたいと思っています。
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