「アメとムチ」で屈服を強いる構図も変わっていない。
昨年(2013年)12月27日、沖縄県庁前広場には、「不承認」「屈しない」とのプラカードが掲げられた。仲井真弘多知事の辺野古埋め立て承認に抗議して、県民1,500人が集まった。そこにいた30代の男性は、基地反対の集まりに初めて参加したという。「これまで選挙で自民党にずっと入れてきた。今回ほど後悔したことはない」。
<沖縄のアイデンティティーを傷つけた>
歴史とアイデンティティーを保って、文化と伝統を守るのが保守であるはずだが、「沖縄では、利権を守って金を保つのが保守になってしまった」と嘆く声がささやかれている。
「沖縄県民はお金で転ぶ」「ゆすりたかりの名人だ」と、本土から罵声が浴びせられるようになった。「基地反対は、国からお金を引き出すための条件闘争に過ぎなかった」と受け止められた。辺野古移設に反対する民意と公約に反しただけでなく、沖縄県民のアイデンティティーを傷付けた行動が、かつてない怒りを呼び起こしている。
知事に対し、県議会は復帰以降初めての辞任要求決議を社民・護憲、県民ネット、生活、沖縄社会大衆党、そうぞうの賛成多数で可決した。「県民への冒涜」「県民代表の資格はない」という激しい非難の言葉が連ねられている。
<まやかしの振興予算、根拠のない抑止力>
これほどまで基地と経済振興策が露骨にリンクされたことはない。ところが、仲井真知事が「有史以来」と喜んだ振興予算や「驚くべき立派な内容」と褒めた負担軽減策というアメも、普天間基地固定化という恫喝じみたムチも、まやかしで根拠がない。
振興予算3,460億円には、那覇空港第2滑走路330億円、大学院大学195億円、不発弾処理25億円、学校の耐震化95億円など、特別な沖縄振興予算ではなく、国の事業や、全国どこでも実施している事業が含まれ、"水膨れ"した金額だ。しかも、辺野古移設を拒否した大田昌秀知事(当時)の時代には、約4,700億円あった。
海兵隊が抑止力として沖縄に必要だという論理について、元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は否定的だ。「抑止とは、正面衝突を避けるためのブレーキに代わるもの。米中は摩擦があっても滅ぼす関係ではない。いざというときに使わない軍事力は抑止力ではない」と指摘する。
米国側からも、辺野古に代わる案があるとの指摘は再三繰り返されてきた。
<米軍の要塞化の恐れ 耐え難い苦痛>
安保の負担を十二分に担ってきた沖縄は、「基地と共存できない、相次ぐ事件事故にはもう耐えられない、基地はなくしてほしい」と、それこそ何百回、何千回、数えきれないほど抗議の声を上げてきた。
ましてや、存在意義のない米海兵隊のために、基地が固定化されるのは到底容認できないというのが率直なところだ。
元自民党県連顧問の仲里利信・元県議会議長は、こう語る。「辺野古に基地を造ってしまえば、米軍撤退は不可能。菅官房長官は『日米同盟は50年安泰だ』と述べた。沖縄は米軍の軍事植民地として捨てられた。沖縄が米軍の要塞化される恐れがある」。
仲里氏が危惧するのは、もう1つある。安倍政権が、尖閣諸島をめぐって、チキンレースのように中国と軍事路線で張り合っていることだ。新防衛大綱・中期防衛力整備で、沖縄を『安全保障上極めて重要な位置』として、県内の自衛隊基地強化が盛り込まれた。沖縄が反撃を受けないならともかく、基地があるがゆえに攻撃を受ける危険があるとなれば、沖縄戦の体験が蘇る。
「安倍政権のやり方は、戦争まっしぐらだ。教科書検定で軍部を美化し、住民を巻き込んだ沖縄戦の苦しみを子や孫に二度と体験させたくない。今回の基地建設はなんとしても止めないといけない」。
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