<基地絡みの振興策への反発>
新基地推進派の末松氏は、「知事が埋め立てを承認して、移設問題は決着がついた。新基地反対では再編交付金がこない。再編交付金で、新しい名護市の街づくりを」と掲げた。選挙戦では、自民党主導・内閣総出の様相だった。石破茂幹事長、田村憲久厚労相、山本一太沖縄担当大臣、内閣府の小泉進次郎政務官、自民党国会議員が連日のように応援に駆けつけた。後援会事務所には、告示前から自民党県連の担当者が陣取り、応援に入る国会議員の名前で連日埋まったスケジュール表を手に調整。県内各地から応援に駆け付けた自民党議員には、「辺野古に反対したから再編交付金42億円がおりなかった。このままでは200億円が無になると徹底しろ。稲嶺市長は共産党だと言うのを必ず忘れるな」と意思統一。
「500億円の沖縄振興基金」をぶち上げた石破幹事長の発言は、「基地の場所は政府が決める」との地方自治否定の発言とあいまって、「500億円の札束で市民の顔をひっぱたいて、県民の心を買うのか!」と激しい反発を生んだ。
玉城義和県議(名護市選出)は、「基地推進派は、基地を受け入れることについて、まともな理屈が言えないので振興策の話しかできない。500億円の話をした途端、市民の反発は強まった。17年間の結論は、基地とリンクした振興策で振興しないことがわかった。カネの話をすればするほど泥沼にハマることを物語っている」と批判した。
<自立経済への渇望が後押し>
選挙戦では、末松氏が沖縄振興予算などを条件にして埋め立てを承認し、政府・知事と一体で再編交付金による振興を掲げたため、振興のあり方も問われた。
稲嶺市長は4年前、「辺野古の海にも陸にも新しい基地を造らせない」と公約。今回も「最後の砦になる」「自然を守り、未来の子どものために基地を造らせない」と訴えた。再編交付金に頼らない財政運営、まちづくりの実績をアピール。別の交付金などの財源を獲得し、建設事業費の確保・増加、小中一貫教育校開校、保育園の就園児数560人増、中学卒業まで通院・入院医療費無料、小中学校の耐震化推進、全小中学校の普通教室クーラー設置(2014年度完了予定)などを実現してきた。
復帰以来の念願となっている「沖縄の自立」「自立経済」への渇望が、稲嶺市長再選のもう1つの原動力になった。恫喝や振興予算という「アメとムチ」は、自民党の県選出国会議員や自民党県連、仲井真知事に対しては成功し、「県外移設」の公約を撤回させた。だが、名護市民には通用しなかった。
稲嶺市長は、「再編交付金は一時的なものであり、長続きするものではない」と指摘。名護市を自ら作り上げていくなら、「持続する経済、産業」であるべきだとの考えを示し、決意をこう表明した。「市民自ら立ち上がって一緒に行動し汗をかき、未来の子どもらに誇りを持てる名護市を築いていきたい」。
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