福岡市地下鉄は、1981年7月26日の空港線(室見~天神、5.8km)開業以来、福岡都心部へのアクセスを担う主要な交通インフラとして、福岡市の都市力を支えてきた。82年4月の箱崎線、2005年2月の七隈線の開業など事業拡張を重ね、開業30年にあたる11年12月には利用者数が30億人を突破している。所管する福岡市交通局は現在、2020年度の開業に向け、七隈線延伸事業(天神南~博多)を進めており、開業により、都心部アクセスのさらなる向上などが期待されている。福岡市地下鉄事業経営の現状などについて聞いた。
――福岡市の都市力における地下鉄の役割は?
細川浩行氏(以下、細川) 福岡市では2013年度から10年間の「第9次福岡市基本計画」を策定しました。この計画の基本戦略の1つとして、「生活の質の向上と都市の成長の好循環を創り出す」を掲げています。生活の質が上がれば、人と経済を呼び込むことができます。それにより都市の活力が生まれ、生活の質がさらに高まるという好循環を生み出そうというものです。
都市の成長を支えるまちづくりに関する施策の多くは住宅都市局の所管ですが、交通局も地下鉄事業を通じて、住宅都市局と連係してまちづくりを促進しています。我々は、地下鉄事業そのものによって都市の活力を生み出すというよりも、地下鉄により、渋滞などの交通課題やCO2などの環境の問題を緩和することを通して、生活の質の向上や都市の活力を支えるものであると考えています。また、交通ネットワークが充実することにより、まちづくりが促進されることも、地下鉄の効果の1つであると考えています。
――経営状況はどうなっていますか。
細川 地下鉄事業は、一般会計とは異なる独立採算制の地方公営企業法適用です。地下鉄事業が全国的に公営企業として実施されているのは、多額の初期投資が必要であり、収支均衡までに長い期間を要するという、民間企業が手を出しにくい事業だからです。
福岡市地下鉄は今年で32年目を迎えますが、当初から単年度収支の赤字が続いてきました。03、04年度に黒字になりましたが、05年度の七隈線開業にともない、減価償却費や支払利息が増加し、再び赤字に転じました。その後、年々赤字幅を減らし、11年度には七隈線開業後、初の黒字(7億7,500万円)になりました。
ただ、それは単年度収支の話で、累積では1,400億円の欠損金(11年度)を抱えています。今後、これをいかに解消していくかが経営上の大きな課題です。この点、増客増収できるかが大きな鍵になります。
営業ベースでは、250億円程度の営業収益に対し、初期投資に絡む減価償却費、支払利息などの支出を除けば、半分程度の経費で運営を行なっています。減価償却費や支払利息は年々減少していきますので、長期的には収支は改善していきますが、増客増収や効率化を進めながら、計画的に累積欠損金を解消していくことが重要であると考えています。
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