みずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長(61歳)は23日記者会見し、兼務するみずほ銀行頭取を4月1日付で辞任し、後任に林信秀副頭取(56歳)が昇格する人事を発表した。佐藤氏は代表権のない取締役に退き、みずほFG社長に専念する。
佐藤頭取は林副頭取を後継指名した理由を聞かれ、「旧3行(日本興業銀行・第一勧業銀行・富士銀行)の意識がない人を選んだ」と強調した。更に佐藤頭取は頭取辞任について、委員会設置会社への移行にともなう社外取締役の選任では「不退転の決意を社外並びに全社員に示す必要がある」と述べた。そのため持ち株会社社長職は続投し、グループCEOとして委員会設置会社への移行作業や、持ち株会社の機能強化、企業文化の変革に尽力する姿勢を強調した。
同席した次期林頭取は「佐藤社長と二人三脚で新しいガバナンス体制の構築に取り組む」との抱負を語った。
みずほFGとみずほ銀行は先週の17日、みずほ銀行が信販会社のオリエントコーポレーション(オリコ)を窓口として暴力団関係者らへの融資を放置していた問題で、金融庁に2度の業務改善計画を提出。同日記者会見した佐藤康博社長は、「改めて深くお詫びする」と謝罪し、旧三行出身者によるバランス人事の弊害を払しょくするために、6月に委員会設置会社へ移行するため兼務するみずほ銀行頭取を辞任せず続投し、グループの改革に全力を挙げて取り組む姿勢を語ったばかりであった。
それからわずか1週間も経たずに佐藤社長がこの時期(23日)に頭取辞任を決意したのはなぜなのだろうか。その裏には何があったのだろうか。
通常国会が今日(24日)開かれることになっており、みずほFGは2度の業務改善計画を出したことで、「再度国会に参考人招致されないよう先手を打ったのではないか」との見方をされるほど唐突な頭取交代の発表だった。
佐藤社長は、17日の記者会見で、「6月に委員会設置会社に移行するために、3月末までにグループの役員の人事体制を整える」と表明していたが、そのことがかえって旧3行出身者の疑心暗鬼を生み、人事抗争が激化し収拾がつかなくなったのではないかとの憶測を呼んでいる。
そのため興銀出身の佐藤社長は、今回の暴力団関係者の問題融資を引き起こしたオリコが第一勧銀系列だったことから、富士銀出身の林副頭取をみずほ銀行の頭取に就任させ、第一勧業出身者を排除することにしたのではないかとの見方も急浮上している。
いずれにせよ、みずほFGには依然として旧3行意識の呪縛が続いていることを意味しており、反主流派に追いやられた旧第一勧銀出身者はじっと息を潜めて次のチャンスを窺うことになりそうだ。
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