＜逆境のなかで黒字化へ＞
　――傍から見ていると、イベントとかそういったことにものすごく力を入れてあると感じます。

　澤田　そうですね。やはり、良いイベントをやればお客さまが集まりますから。ただし、資金も少ないですし、イベント力もまだまだですから、ディズニーやUSJなどと同じことをやっても勝てません。当初、パレードをやっていたときに、ディズニーを見た人からは「何だこのパレードは」と言われましたから。でも、ディズニーくらいの資金をかけてつくれるかというと、当初はそんな資金もなかったですよね。
　ですから、いかにイベントで差別化するかです。「百万本のバラ」というのはディズニーではできませんよね。「光の王国」も、我々がいち早くマッピングイルミネーションを取り入れてできたものです。いかにどこよりも早く新しくやるか、もしくは世界一のものをやるか。他社がやらないイベントを、いかにお客さまが来ていただけるイベントをやるか。それで、やっぱり集客は増えましたね。
　ただ、集客と言うか、売上が増えたのは30％分で、我々がもっと努力したのが経費の削減でした。自動化していったり、電気をLED化していったりと、無駄を徐々になくしていく努力です。目に見えている華やかさより、目に見えない努力の方が大きいです。

　――どちらかというと、絞ることで利益を増してきたことが大きかったわけですね。

　澤田　やはり市場が小さいので、相当良いイベントをやってもあまり集まりません。この周辺の商圏は、東京や関西に比べると10分の１の市場です。たとえば、先日から大阪でイベントをやっていますが、ここの光の王国のイベントを向こうに持って行っています。大阪城のマッピングとイルミネーションをやって、評判はすごく良いです。入場者数も、これからどんどん増えていくと思います。ハウステンボスでは2012年12月に過去20年間で最高の入場者数になり、13年12月はさらにそれを超えているのですが、それを大阪のイベントでは軽々と超えてくるでしょう。

　何が言いたいかというと、市場が違うんですよ。ハウステンボスの方がずっと内容は良いですよ。広いですし。ですが、わずか３～４カ月でつくった大阪のイベントの方が、これからどんどん伸びていきますよ。マーケットの違いですね。マーケットが小さいですから、相当良いものをやっても、大阪だったら倍、東京だったら３～５倍くらい集まるものでも、ここでは集まらない。

　――つまり、ここではマーケットが小さいなかで努力していかなければならない、と。

　澤田　そういうことです。ディズニーの７割のお客さまは、関東のお客さまですから。ここは、福岡を入れても、マーケットが小さすぎます。ですから、その分大変ですね。
　あと、アクセスが悪いです。ということは、来づらいということですよ。ディズニーなんか東京駅から15～20分で行けるのに、ここは飛行場から１時間かかります。長崎から１時間、福岡からは１時間半。かたや東京から15分、羽田からでも20～30分で行けます。やっぱり、このアクセスの悪さ。もう大変なところにつくりましたね。何でこんなところにつくったのでしょうか（笑）。さらに、キャパも小さい。ちょっとお客さまが集まるようになったら、すぐ渋滞しますし、駐車場がありません。

　――「アクセスが悪い」「市場が小さい」「みんな負け癖が付いている」――それでも、澤田社長は黒字化を実現されました。

　澤田　そのために来たわけですからね。私は請負人ですから、請け負いに来て負けるわけにはいきません（笑）。
　黒字にして、これから税金も払うようになりますし、14年には固定資産税の補助もいらなくなりますから、名実ともに１人立ちしたわけです。戦いで言ったら、ずっと負けていたところが、やっと勝ち癖が付いてきて、私の役割の第１段階は終わったんじゃないですか。税金も払えるようになった。固定資産税も免除してもらわなくなった。ボーナスも少し出るようになった。これから環境ももっと良くなっていくと思います。

　――逆境のなかで、コストを削っていく努力と、より意欲的なものを提供して集客をより強めることと、その両輪でやってこられたわけですね。

　澤田　売上は毎年約30％アップ、利益は約60％アップ。これは今でも続いていますし、まだずっと続くんじゃないですか。考えようによっては、ここはダイヤモンドみたいなもので、磨けばもっと輝きます。最初は石炭かと思っていたこともあったのですが、今ではダイヤモンドだと思っています。将来、もっとすごくなりますよ。

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