NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、民主主義が機能しているかについて沖縄と本土とを対比した、1月27日付の記事を紹介する。
沖縄では名護市長選で、公然とした巨大な買収工作が展開されたが、名護市民は「カネで転ばな」かった。
自民党の石破茂幹事長は名護市に選挙応援に入り、500億円の基金創設を打ち出した。基地建設推進の末松候補を当選させれば500億円の基金を作るという話だった。名護の市民は、金を積まれて、金の前に屈服することを強要されたと感じただろう。
当選した稲嶺進市長は1月7日の決起大会で次のように述べた。
「11月に県選出の国会議員、そして自民党の県連、ヤマトゥ(大和)の力に首がウサーサッティ(抑えられて)ムヌゥイワサンアタイ(物をいえないような)イッターヤ、ウヤヌイイシ、チカンガンブイ(おまえたちは、親のいうことをきかないのか)、こんな感じで脅かされて恫喝されて、そして屈服をしてしまったんです。石破幹事長のうしろに座らされていた5名の姿が新聞に出ておりました。アギジャビヨー(あーあ...)。あんなに恥ずかしい思い、そしてカメラの前に晒されて、あの惨めな姿、あれを見てワジワジー(腹が立つ)というよりも悲しくなったんです。そういう状況をこれまで我々は68年間ずっと煮え湯を飲まされるような形で虐げられてきた。そして68年後に今、あらためてあの琉球殖民を思い起こさせるようなそういう姿が映し出されます。アンスカマデ、スンナーサイ(そこまでしますか?)そこまでやりますか、みなさん。でもそれが今後の姿なんです」。
「仲井真県知事も予算折衝に行ったんでしょうかね。官邸に行って、その帰りに、驚くべき内容を提示した、と。よい正月を迎えられる、140万県民を代表して感謝申し上げます。誰がお願いしましたか、そんなこと。本当に、何が驚くべき内容ですか。驚いたのは、ワッターウチナーンチュ(私たち沖縄人)です。3,000億円か知りませんけれどもワッターウチナーンチュ(私たち沖縄人)、そこまで卑屈になる必要がありますかね。ネーランヨーヤーサイ(ないですよね)」。
「結局沖縄はお金か。反対するのはその金を引き上げるためにやってるんじゃないの。こんな誤ったメッセージをいちばんテイショウ(大将)がそれをやっちゃったということですね。我々がウチナーンチュとしてとても許されるものではない。私は沖縄の自立経済ということを言っております。しかしあの瞬間、私は沖縄の自立は遠のいてしまったと思います」。
名護市民はカネで転ばなかった。安倍首相、石破幹事長は、とんだ計算違いをした。カネで頬を叩けば、名護市民など、簡単に転ぶものだと考えていたのである。稲嶺進という優れたリーダーがおり、カネに屈服しない厚い層の市民が存在した。
もうひとつ見落とせないのが、健全メディアの存在だ。
琉球新報は、世界の29名の識者による辺野古基地建設阻止の声明を特大の取り扱いで報じた。稲嶺進氏に、「我々は今、危機に直面しておりますけれども、このように我々の応援団は世界中にいるということであります。こういう動きを見ますと、我々もまた、よしがんばるぞ、という気持ちにもなりますよね」と言わせた。
権力に迎合しないメディアが存在することは、民主主義を健全に機能させるために不可欠の要素である。
ところが本土はどうだ。
マスメディア情報空間が完全に汚染されている。市民が真実の情報を得るのは至難の業である。
メディア情報空間の汚染の中核に位置するのがNHKだ。NHKの極右化、安倍首相によるNHKの私物化が激烈を極めている。安倍首相はNHKの経営委員人事を私物化した。そして、NHK人事を私物化した。
その結果として、NHKの偏向が一段と深刻になっている。
※続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第775号「安倍首相完全私物化NHKの執行部が大暴走」で。
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