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「NISA」(ニーサ)に潜むリスクを検証する(11)
経済
2014年1月28日 10:19

A-3.jpg 証券業界にとって一任勘定が認められた「ラップ口座」に次いで、新商品として登場した「NISA」(ニーサ)への期待は非常に大きいものがある。それはNISAそのものが持つ商品特性だけに期待しているのではない。証券会社が力を入れている裏には、NISAと言う福袋を使って新規顧客を開拓し、大口優良顧客として取り込もうとする戦略も見え隠れする。非課税のニーサはいわば客寄せのための特売商品であるとも言えよう。

 各証券会社にとって問題なのは、NISAホルダーの多くが毎年100万円ずつ投資してくれれば良いが、口座を作っただけで利用してもらえなければ、口座の維持・管理には莫大な経費がかかり、コスト倒れになる可能性があることだ。証券会社にとっても、いかに優良な顧客を囲いこむことができるかが勝負の大きな鍵となる。
 懸念もないわけではない。株価が順調に推移し、投資家が収益を確保できる環境が続けば良いが、株価の下落によってNISAの投資家に大きな損失が出るような事態となれば、「ラップ口座」の時と同じように、証券会社と顧客のトラブルが多発し、社会問題化する可能性も秘めているからだ。

 そこでこれから本題のNISAのメリット並びにNISAに潜むリスクについて、まずは個人投資家の立場から考察していくことにする。

1.個人投資家のメリットについて
★NISAは名前の通り「少額投資非課税制度」であり、1年間で100万円を限度とし、10年間で通算1,000万円の投資が認められる。預貯金の利息に対しては一律に20.315%が課税されるが、NISAで運用すれば、譲渡益や配当金・分配金は課税されないという大特典がついている。

★更に相続税が今年1月1日より、従来の「5,000万円+600万円×法定相続人の数」から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となり、相続税がかかる人が増えることになる。それに照準を合わせるように誕生したのがNISAなのである。

 NISAはまさに相続税対策として生まれた商品と言えなくもない。生前に資産を贈与し、課税対象となる遺産の金額を減らすことができるからだ。贈与税の基礎控除額は年間110万円であり、毎年この金額以下の贈与であれば、贈与税はかからない。NISAで購入できる株式や株式投資信託は年間100万円までなので、贈与税の基礎控除額内で収まることになる。
 親が子供名義のNISA口座を作り、株式や株式投資信託を購入すれば合法的に資産を子供に生前贈与することができる。もし子供が2人であれば10年間で2,000万円の財産を贈与することができる計算だ。

 そうはいっても大多数の人々は日々の暮らしに追われる毎日であり、子供に生前贈与できるほどの「ゆとり」がある人はごく一部であろう。一般投資家保護として登場したNISAではあるが、一方で「金持ち優遇策」と陰口される所以がその辺にあるのかもしれない。

(つづく)
【北山 譲】

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