フィリピンの事例は決して他人事ではない。普天間基地移設問題で手をこまねいていると、フィリピンと同じ運命を日本も辿ることにもなり兼ねない。もし仮に、日本政府(沖縄県内の動きも含む)の対応に嫌気が差した米国が、沖縄から米軍を撤退させるような悪夢が起これば、沖縄は常に中国の脅威に曝されることになる。
さらに東シナ海が中国の内海化ともなれば、ガス田開発は中国に独占され、尖閣諸島が中国人民解放軍に不法占拠されるのも時間の問題となり、日本の権益が中国に支配されることは誰の目にも明らかになるだろう。
同盟関係は永遠ではない。いかに緊密な国同士であっても、同盟関係を絶対視してはならないというのが国際政治の常識であり歴史が証明している。日本も過去に日英同盟の解消という苦い経験をしている。外国の軍隊が国内に駐留することは決して好ましいことではないが、日本が自主防衛を選択する意思と覚悟がない以上、沖縄に展開する米軍基地のプレゼンスは中国に対する抑止力となっている。日米同盟は日本の安全保障上必要不可欠なのである。
なお、フィリピンは2000年以降、中国の脅威に対抗して、再び米国との軍事同盟関係の強化に乗り出している。合同軍事演習も行なわれている。
<戦犯は鳩山氏>
鳩山由紀夫元首相は以前から、米軍は日本に駐留せず、有事に限って駆けつけるという「常時駐留なき日米安保」論を提唱していた。そのため、民主党が政権交代を実現した総選挙で、普天間基地については、「国外、最低でも県外移設」を実現することを沖縄県民に約束した。
ところが、鳩山氏は首相就任後、初めて沖縄を訪問した際の仲井真知事との会談の席上、「国外、最低でも県外移設」の発言を翻し、「日米同盟を考えた時、それは抑止力の観点から難しいとの思いになった。普天間基地の機能をすべて県外にというのは現実問題として難しい」と発言し、移設先県外断念を表明したのである。
鳩山氏の発言の迷走が普天間基地移設問題を難しくし、一時的に日米同盟に亀裂を生む結果となったことは、日米関係に詳しい多くの識者が指摘するところであり、鳩山氏の責任は重いと言わざるを得ない。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。現在は、日本防災士機構認証研修機関の(株)防災士研修センター常務取締役。著書に、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。11月25日には、夕刊フジに連載中の企画をまとめた『探訪 日本の名城 上-戦国武将と出会う旅』(青林堂)を発売。公式HPはコチラ。
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