台湾の街を歩けば「便當」の文字を見ることがあるだろう。これは「ビエンタン」と発音し、「弁当」の意味である。
台湾では弁当のことをもともと「飯包」と呼んだが、日本の植民地時代の影響から「弁当」と呼ぶようになった。漢字も「弁当」が転じて「便當」として残ったという。
日本と台湾で現在でも酷似している文化として、列車内や駅のベンチで弁当を食べる「駅弁」があるが、台湾では「鉄路便當」と呼ばれている。日本ではプラスチック容器に入れられたものが多いが、台湾では紙の容器や、こだわる店ではアルミ容器を使用したものもある。
台湾には日本統治時代の遺産として残る建造物や駅舎があるが、一方で「弁当」などの食文化も残る。
日本の弁当は「幕の内弁当」のようにおかず各々とご飯がしきりで分かれているイメージだが、台湾のものは鶏肉フライや豚のスペアリブ、ソーセージ、魚フライ等のメインに、高菜、豆干(豆腐を干したもの)などが、ご飯にかぶさり、その上から蓋がされている。具の味が白米にも染み込んでいるため、日本で言う「丼」のイメージに近い。味は全体的に「醤油」テイストのものが多く、塩気は、日本ほどはないものの、油っこさはある。その油と白米が案外マッチしているのだ。
米は、台湾東部で生産される「蓬莱米(日本の農学者が台湾で品種改良して産み出した)」が多く使われている。日本のコシヒカリのように甘く弾力があり、弁当として食べるにはもってこいだ。台湾の弁当を食べ「台湾のお米は美味しい!」と感想を持つ日本人観光客も多い。料金は、80元(約250円)~100元(約320円)が相場で日本より若干安めだが、最近では、一流シェフが味を追究した弁当が「駅弁」として発売されるなど、台湾でも弁当市場が再注目されている。
台北で一番手軽に「駅弁」を購入できるのが、台湾鉄道「台北駅」だ。台北国際空港から直行バスが出ており、その終点だ。
大きな鶏のもも肉をハーブやニンニクなどで香り漬けして焼いた「鶏腿便當」(100元/約310円)が人気メニュー。台湾人のみならず、日本人が食べても「うまい!」と思える本格派のテイストなので、機会あれば一度お試しいただきたい。
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