異国文化や情勢を知るための有効な手段として「映画を見る」という方法が挙げられる。日本では「韓流ドラマ」も多く放送されているが、映画には歴史的背景や伝統的な文化、風俗が色濃く反映されていることが多い。
「韓国を知る」ためにどのような映画を見れば良いのだろうか・・・。韓国でヒットした作品、あるいは、韓国人有識者が推薦する名作映画をご紹介する。ピックアップする作品は日本の大手レンタルDVDストアでも入手可能だ。
韓国と北朝鮮、政府間の関係は険悪だが、個人同士の感情はどうなのか?
日本と北朝鮮も政府間の関係は悪いが、仮に、北朝鮮人と遭遇したとして、日本人が彼らに攻撃を加えたり、不快感を示したりすることはあるだろうか?北朝鮮人もまた、北朝鮮政府の圧政によって虐げられている「被害者」とも考えられる。憎むべきは「一般市民」ではなく「政府の態勢」ではないかと。
韓国では「北朝鮮政府」に対する嫌悪感を持ちながら、「北朝鮮人」に対してはむしろ同情する市民が少なくない。「あのような政府の下で生活するなんて、かわいそうだ」と。脱北してきた人間を優しい目で受け入れる風土があり、彼らに対しての「同情」があるからだ。韓国人と脱北者の間に「友情」が芽生えたという話も少なくない。
『トンマッコルへようこそ』は、2005年公開。2005年の韓国の最多観客動員数を記録した。朝鮮戦争が舞台だ。戦争が激しくなる1950年11月。太白山脈の奥地にトンマッコルという小さな村があった。平和で村人は純粋。「戦争」のことも全くわからない。その村に、迷い込み現れたのは韓国軍兵士数名と朝鮮人民軍兵士数名。兵士は銃を向け合い牽制するが、村人の純粋な心も相まって、お互いに少しずつ心を開く。農作業などを共にするに連れ、「友情」さえも生まれるのであった。
韓国兵と北朝鮮兵との間に芽生えた「友情」がメインテーマとなっている。実話をもとにしたフィクションだ。『JSA』(2000年公開)もそうだが、韓国と北朝鮮の間に対話路線の気運が流れていた頃、南と北との人間に発生する「情」を描いた作品が増加したと言う。ただ、韓国人行政関係者によると「現在はその気運は落ちている」とのことだ。
激動のアジア。移りゆくパワーバランス。日中、日韓の関係は悪化の一途。
ただ、そのなかで「民間同士の交流」は依然として続いている。我々は、時に、国と国の政治的思想の狭間で揺り動かされる。しかし、何より大事なのは、個人同士の「心の繋がり」なのだということを再認識できる作品だ。
■主なキャスト
チョン・ジェヨン(朝鮮人民軍兵士・リスファ役・・・.『シルミド』にも出演)
シン・ハギュン(韓国軍兵士・ピョヒョンチョル役)
カン・ヘジョン(村人女性・ヨイル役・・・..この作品で第43回大鐘賞・助演女優賞を受賞)
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