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船井ブランドの罪深い所業~船井メディアの暗躍
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2014年1月30日 11:17

 昨年、福岡市に本社を置く「アースハート」の脱税事件にからみ、「船井メディア」という会社の元代表が暗躍していた実態を報じた。アースハートは、病気を治すことができる手かざしパワーを体得させるというセミナーを開催し、受講料として1人当たり70万円を支払わせていた会社。会員数は数万人とも言われ、全国に拠点を構えている。同社には2010年に国税当局が査察に入り、昨年1月、福岡地検が法人税法違反(脱税)の疑いで強制捜査。同社の現・元代表者らが逮捕・起訴され、現在も刑事裁判が続いている。

<事実上の取材拒否>
【写真1】船井メディア フロア看板 「船井メディア」は、東証一部上場のコンサルタント会社「船井総合研究所」(船井総研)を創設した故・船井幸雄氏のCDやカセットの販売、月刊誌の発行などを手がける会社だ。代表者だった野々垣健五氏は、昨年秋に退任しているが、脱税で立件されたアースハートから約14億円に上る資金を引き出していた。

 野々垣氏は、脱税の嫌疑をかけられていたアースハートに対し、国税OBの税理士を登場させたうえ、言葉巧みにアースハート側に取り入り、自身が深く関与する大阪の企業などに、貸付や出資のかたちで資金を出させていた。大阪府堺市の「バイオネット研究所」(野々垣氏は元代表)には、小規模太陽光発電施設(発電出力1メガワット:1,000kW)の建設費用としては破格の9億円もの資金が流れていた。このケースでは、5億円以上の資金が使途不明だとも言われる。

 弊社取材班は、大阪、愛知、東京で綿密な取材を敢行。アースハート側の主張も確認したうえで、野々垣氏が関与した事業について、詳細を報じた。ネット配信記事のシリーズタイトルは「船井総研・子会社元社長の抱える闇」。弊誌「I・B」では、「東証一部上場の船井総研の子会社元社長の抱える闇」と題しての掲載だった。これ以前にも船井メディアに対して、数回にわたって取材を申し入れたが、まったく連絡がなく、事実上の取材拒否となっていた。

<船井総研広報からの抗議>
 これに対し昨年暮、船井総研の広報から抗議が入る。連載記事の書き出し≪東証1部上場の「船井総合研究所」(船井総研)。経営コンサルティングの草分け的存在である船井幸雄氏が創業したコンサルタント会社だ。その子会社に「船井メディア」という会社がある。≫の、『子会社』という表現が間違いだとの指摘である。船井総研と船井メディアは、資本のうえでも法的にも、何の関係もないのだという。

 たしかに、厳密に言えば両社には「資本関係」はない。しかし、まったく関係のない会社と言えるのだろうか? 船井メディアの大株主は「船井本社」という会社である。しかも100%出資。かたや船井総研の大株主には、船井幸夫氏と船井本社の名前があることが、同社の直近の有価証券報告書で確認できる。船井氏が8.91%、船井本社が8.65%の持ち株比率である。ちなみに、総研本体の持ち株は9.76%だ。

 船井メディアと総研には、たしかに資本関係はない。だが、船井本社の影響下にあることはたしかだ。資本関係で見ても、まったく無関係とは言えまい。何より、「船井総研」の船井とは、先日亡くなった船井幸夫氏の「フナイ」のはず。総研もメディアも、コンサル業界では立志伝中の人物となった幸夫氏が創設した会社であることも、疑う余地はない。

 メディアの野々垣がやったことで、船井総研の名前が記事に踊るのは迷惑ということなのだろうが、アースハート関係者への取材によって、野々垣氏をアースハート側に引き合わせたのは、船井氏本人だったことが明らかになっている。このとき、船井氏は「うちの子会社の人間」という表現で、船井メディアの野々垣氏を紹介していたのである。アースハート側の関係者の多くは、現在も船井メディアを総研の「子会社」だと信じているほどなのだ。

<船井総研は無関係なのか?>
【写真2】船井メディアのポストには、にんげんクラブ大会事務局の名前も 【写真1】にある通り、船井メディアは船井本社と同じビルの同じフロアに入居しており、そこには「船井幸夫グループ」と表記してある。船井本社が総研の大株主であり、メディアがその船井本社の100%子会社なら、何の関係もないとの主張は、一般的には通用しないのではないだろうか。

 船井メディアが入居する部屋のなかには、そこに本社を置いている別の企業がある。「(株)本物研究所」だ(【写真1】参照)。この会社は、アースハートの脱税事件が表面化する直前の昨年1月、福岡市内で「にんげんクラブ九州大会」を主催していた。ともに主催に名を連ねているのは「にんげんクラブ大会実行委員会」。これまた野々垣氏が代表を務めていた船井メディア内に事務局を置いている(【写真2】参照)。

 本物研究所設立10周年とされたこの大会では、スピリチュアル関係者と見られる方々の講演やらセミナーやらが開かれたのだが、チケット申込書を兼ねたビラ【写真3】には、船井幸夫氏と「船井本社」の代表取締役社長の顔写真が掲載されていた。幸夫氏の肩書は、船井本社の代表取締役会長。そして、このセミナーの講師の1人こそ、アースハートの前代表者だったのである。前代表は昔から船井氏を尊敬しており、脱税の指摘を受けて困惑したときに、まず船井氏に相談したのだという。健康を害していた船井氏は、担当として野々垣氏を紹介。アースハートの相談窓口に指名したとされる。

 その後、野々垣氏は船井ブランドの威光で、アースハートから巨額の資金を引っ張り出していた。
 アースハートの関係者は、次のように話す。「フナイのブランドに騙されたんだ。野々垣は、絶対に脱税事件にはならないと断言していた。だからこそ、巨額の資金を言いなりに出した。わずか1メガの太陽光発電に、9億円もかかるはずないだろう。フナイ側がきちんと対応していたら、アースハートとしても、国税の主張を早くに受け入れていた。刑事事件になんか、ならなかった。フナイに何の関係もないなどと言う資格があるとは思えない」。

 「船井総研は無関係」――そうした主張が通用するのか、たしかに疑問である。

【写真3】にんげんクラブ九州大会のビラ

【特別取材班】


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