<国連憲章と集団的自衛権>
国連憲章はただ「自衛権」を自然権的な意味合いで「固有の権利」としたのではなく、「個別的又は集団的自衛」の権利を「固有の権利」とした。集団的自衛権とは、自国が直接、「個別的自衛権」発動の事態に陥らなくても、友好国(同盟国)がそのような事態となった場合に、その救援のための武力行使をする権利である。
それまでは、国家が自衛権を有することは当然視されてきたとはいえ、国家の自衛権が「個別的」「集団的」の二態様で明示的に観念されたことはなかった。
昔は、そのような便利な概念はなかったが、「軍事同盟」とか「攻守同盟」などの条約を締結して、相互に参戦を義務づけた「日英同盟」「日独伊三国同盟」などが結ばれていた。
しかし、軍事同盟は、昔はいたずらに戦火を拡大するものとして道義的非難を浴びていたので「国際連盟」時代は、そのような考え方は抑制されていた。ところが「国際連合」は、それを「集団的自衛権」の名のもとに広く公然と認め、「固有の権利」としたのである。
加えて、国際連合は国連憲章第八章にある「地域的取極又は地域機関」を奨励してきた。これは何を意味するのか。ひと口に言えば、国連憲章に言う「集団的自衛権」という権利を、別の条約で手当てして、これをそっくりそのまま義務とするものである。地域的な紛争を解決するためには、まず地域的に努力することが好ましく、そのため地域的な安全保障のアレンジメントにも積極的意義を与えている。
たとえば、米ソ冷戦構造時代にできたNATO「北大西洋条約機構(1949年)」、「ワルシャワ条約機構(1955年)」などは多国間の集団安全保障条約であり、まさに「集団的自衛権」と「地域的取極又は地域機関」との2つの考え方が結合して生まれた「集団安全保障体制」と言える。
「日米安全保障条約(1951年)」、「米韓相互防衛条約(1953年)」、「米比相互防衛条約(1951年)」、「中ソ友好同盟条約(1950年)」など2国間の安全保障条約も本質的には同じである。
以上のように、国連憲章は国際連合自らの武力行使に加えて、加盟国に対して「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を認め、条件付きではあるが武力行使を認めている。武力行使には、当然に戦争の意思をもってする国際的武力紛争も含まれるのであり、これらのことから、国連憲章は決して戦争を否定していないのである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。現在は、日本防災士機構認証研修機関の(株)防災士研修センター常務取締役。著書に、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。11月25日には、夕刊フジに連載中の企画をまとめた『探訪 日本の名城 上-戦国武将と出会う旅』(青林堂)を発売。公式HPはコチラ。
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