開業以来最多の月間入場者数を更新（2013年12月）し、順調に経営再建がすすむハウステンボス（長崎県佐世保市）。現在の好調ぶりから想像できないが、1992年のオープンから低空飛行が続いていた。こだわり抜いた施設で、こだわりの経営を続けることの難しさ。さまざまな策で浮上を図るもことごとく失敗し、2003年、ついに会社更生法を申請することとなる。以後、野村プリンシパル・ファイナンスが再建を目指すも頓挫。2010年、そのバトンはH.I.Sの会長である澤田秀雄氏にわたされることとなり、日本一、世界一にこだわる挑戦を続けることで、黒字を計上することに成功した。ハウステンボスの来歴をたどる。

＜日本随一の広大なテーマパーク＞
　長崎県西部は、九十九島はじめ海上自衛隊基地など、多くの名所旧跡を擁する観光エリアだ。造船の街として栄えた同地で、とくに異彩を放つのがハウステンボスである。オランダの街並みを再現した日本でも有数の規模を誇るテーマパークだ。

　オランダと縁の深い同県に、オランダ以上にオランダらしい建築物を建設し、折々にはカーニバルを行なうなど、異国情緒あふれる観光施設として注目を集めてきた。96年には入場者数380万人を記録。同所はかつて日本海軍の兵学校が置かれ、戦後は長崎県が取得した土地で、工業団地にするなどの変遷があったものの、いずれもうまくいかず、広大な敷地の利用法について議会などで広く議論がなされていた。
　近隣施設であるオランダ村が注目を浴びていたことを受けて、当初はオランダ村のための駐車場としての活用が検討された。西彼町（現西海市）の元役場職員でオランダ村の創業者である神近義邦氏が土地の取得を要望したものの、そのアイデアは駐車場としてではなく、オランダ村を一歩深める内容を持つテーマパークの建設というものだった。

　地盤を改良し、運河をめぐらせる。水のよどみをなくすためのポンプも設置し、水質の改善まで行なう。建物もよりオランダらしいもの―いわば本物のオランダそのものを持ってくるほどのこだわりをもってデザインされていった。まち並みづくりにはオランダ政府やオランダの企業が協力し、紋章ひとつ、石像ひとつに至るまでこだわり抜かれてつくられていくこととなる。それらは園を貫くコンセプトとして、日蘭友好のストーリーとして仕立てられている。

　こうしてオープンしたハウステンボスの園の広さは日本でもトップクラスの152ha。東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせたものと同程度の面積だ。単一のテーマパークとしては日本で随一のものである。「小さな国」といっても過言ではない敷地の広さで、日常的な外界とのつながりを完全に断ち切り、国内にいながら古き良き欧州を体験できる施設として名を馳せていくこととなる。

＜オランダ村の迷走、ハウステンボスも下降＞
　ハウステンボスのきっかけとなった長崎オランダ村は、1987年の開園。当時の景気の良さもあり、名所の１つとして修学旅行客などの観光客を多く集めることとなる。最盛期の1990年には入場者数200万人を記録し、名実ともに九州の主要テーマパークに名を連ねることとなる。
　レンガひとつにまでこだわる姿勢は、後のハウステンボスにも引き継がれていくが、ハウステンボスの開園を機に、経営状態は悪化していく。ついには後出のハウステンボスのサテライトパークとして維持されていくようになるものの、入場者数の増加にはつながらず、2000年には入場者数は21万人にまで落ち込んだ。そして01年、閉園となる。

　05年、食のテーマパークとして再出発を図るも半年で破綻に至り、10年以後は西海市西彼総合支所による行政活用がなされるようになる。ハウステンボスにはおよばないものの広大な敷地にある多くの建物群は老朽化しており、そのリフォームにも相当な支出が必要な状態だ。現在、オランダ村の再興を目指して西海市がさまざまな（オランダとは関係のない）イベントを行なっている状態である。

　ハウステンボスもオランダ村と同じく、景気の動向に歩調を合わせるがごとく、経営状況はかんばしくない状態が続いた。開園当初からしばらくの間は、物珍しさから入場者が集まり、96年には380万人を数えるほどになった。
　しかし、以降は下落を続け、01年には292万人まで減少。経営状態が悪化したことを理由に、神近氏が、経営支援と引き換えに責任を負って社長の座を退くこととなる。02年には新たなアトラクション「キッズファクトリー」「フライト・オブ・ワンダー」などを設置し入場客の増加を見込むも、経営改善には至らず03年、会社更生法を申請することとなる。

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