NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、マスメディアが報じない日本自身の「政策逆噴射」のリスクについて取り上げた2月3日のブログを紹介する。また、未掲載部分では、事態悪化懸念の主因が安倍政権が強行する超デフレ財政政策にあることを解説している。
内外の株式市場で変調が観測されている。日本の株式市場でも年初来、株価は下落傾向を示している。安倍晋三氏は昨年12月30日の東証大納会に出席して、「アベノミクスは今年も買いだ」と気勢をあげたが、年初来の現実は、その真逆のものになっている。
日本のマスメディアの大半は御用メディアに堕落して、政権の顔色ばかり見る報道を展開している。このことによって、もっとも被害を蒙るのは国民である。国民の目や耳に、真実の情報が提供されない。国民は、マスメディアが流す情報の大半が、色のついたもの、汚染された情報であることを認識して情報に接する必要がある。
年初来の株価下落についても、メディアは、「新興国の経済不安」が波及していると報道する。これも真実を歪める報道である。
私は昨年12月に、『日本経済撃墜-恐怖の政策逆噴射-』(ビジネス社)と題する著書を上梓した。
世間は「アベノミクス」の言葉に踊らされているが、「アベノミクス」は内容のほとんどない空虚なものである。
たしかに2013年前半に株価が上昇したが、その主因は、
1.それ以前の菅・野田政権の経済政策が悪すぎて株価が不当に下振れしていたことの反動
2.2012年7月以降に米国長期金利が上昇して、連動してドル高が生じ、これに連動して日本株価が上昇したこと
である。
「アベノミクス」の第一の矢の金融緩和はあまり効いていない。第二の矢の財政政策は、2013年度は13兆円補正予算で景気を支えたが、2014年度は「恐怖の政策逆噴射」に転じる。
第三の矢の成長政策はまだ動いていないが、その内容は、農業、医療、解雇の自由化、経済特区、法人税減税で、1%の大資本に利益を与えるが、99%の庶民に不利益を与える間違った政策である。
私は拙著に2014年のリスクファクターとして、「SFCの壁」と記述した。2014年の金融市場には、三つのリスクが立ちはだかるとの見方を示した。SはSales Taxのことで、安倍政権が強硬実施する2014年度の超緊縮財政が日本経済を撃墜する可能性が高いことである。FはFRBの略で、米国の金融政策の方向が「金融緩和」から「金融引締め」に転じることに伴うリスクだ。CはChina Riskのことで、中国の政治経済の揺らぎが極めて重要であるとの見解を示したものである。
いま、金融市場ではFのリスクとCのリスクが顕在化し始めている。米国は金融政策の方向を大転換し始めている。金融緩和を強化してきたのを、金融緩和を縮小する方向に転換させつつある。金融緩和を縮小しても、金融緩和は維持するのだから問題は少ないのではないかとの見方がある。
しかし、この見方は正しくない。重要なのは変化の方向である。ベクトルの向きが問題なのだ。
金融引締め期であっても、金融引締めが緩和され始めると、政策の方向は、「引き締め」から「緩和」に転換する。金融緩和期であっても、金融緩和が縮小されるということは、政策の方向が「緩和」から「引き締め」に転換することを意味する。
この変化が重大なのである。
私は、会員制レポートである『金利・為替・株価特報』に、内外の株価は「掉尾(とうび)の一振」で2013年末までは上昇するが、年明け以降は警戒を要するとの見通しを示してきた。
その理由が上記の三つのリスクである。
FRBが金融政策を「引き締め方向」に転換することは、FRBが供給してきたマネーが逆流を始めるということだ。これに連動して、新興国ではマネー流出の懸念が生じ、それを食い止めるために金利引き上げなどの対抗手段が必要になってくる。この懸念が浮上して、内外金融市場に一定の変化が生まれ始めている。
このなかで、日本の株式市場でも株価下落の気配が漂い始めているが、日本の場合、最重要の変化はこの点にはない。日本自身の「政策逆噴射」のリスクが圧倒的に大きいのだ。日本のマスメディアは、この問題をまったく報道しない。
そこで、私は拙著でこの問題を訴えているのだが、これから日本でも、この問題に光が当てられることになるだろう。史上空前の超緊縮財政が実行される。この重大な影響を織り込む動きが日本の株式市場で生まれ始めている可能性をしっかりと踏まえておくべきである。
※続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第781号「株式市場変調主因は安倍政権デフレ政策にある」で。
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