総勢16名の候補者が立った東京都知事選も、いよいよ中盤を折り返した。各候補者が残り少ない時間でラストスパートをかける。ここ最近のメディアへの露出度や世論調査から考えると、勝負は与党が推す舛添要一氏、小泉純一郎元首相とタッグを組む細川護熙氏、共産系が推す宇都宮健児氏、保守層に根強い人気を持つ田母神俊雄氏の4人に絞られそうだ。
前回433万票という圧倒的な得票数の猪瀬直樹氏が徳洲会問題で突如辞任。今回の都知事選はそれを受けて急きょ始まったため、最初から混迷を極めていた。そもそも各政党で候補者が決まらない。そのため「どの政策で信を問うか」ではなく、「どの候補者なら票を獲れるか」という「ノーイシュー選挙」の様相を呈していた
前回96万票で2位だった宇都宮氏は真っ先に立候補を表明。他に有力候補がいなければ当選の道も見えていたが、知名度が高い田母神氏も立候補し、与党が誰を擁立するか注目されていた。途中で自民党を抜けた舛添氏が与党推薦の候補者として浮上すると、自民・公明は党内調整でモメた。とはいえ人材不足の問題もあり、行政経験を有し知名度も高く手堅い舛添氏が擁立された。
これで3つ巴の戦いになる―そうした空気になりつつあるとき、「脱原発」を掲げる細川候補が誕生。「ワンイシュー選挙」へと様相が一変すると同時に、脱原発票を二分してしまうのではないかという懸念が宇都宮氏の支持者の間で生まれた。
2月1日、新宿で街頭演説した細川氏と小泉氏は「なぜ引退した人間が都知事選に出るのか。老人は引っ込んでいろという批判は何回も聞いた」と自嘲しつつ、「原発は我々の世代ではなく若い世代に問題を押し付けてしまう」と訴えた。とくに小泉氏は昔を思い出したのかヒートアップして30分近い独演会となり、誰が立候補者だったか忘れてしまうくらい聴衆の関心を引きつけていた。
1回の選挙でこれだけ「年老いた元首相」が躍るのも珍しい。有権者の1人は「そろそろ老人が引っ張る政治でなく、若い人が活躍できる政治を目指してほしい」と漏らす。そうした層の受け皿として注目されているのが35歳の家入一真氏。福岡県出身の若手起業家だ。元ライブドア社長の堀江貴文氏などが応援しネット層の関心を集めるが、今の日本の選挙では自治体や企業の組織票を動かせなければ勝つのはまだ難しいだろう。
そういう意味で、保守の基盤を持つ自民党がどうしても有利に事を運ぶことになる。それが現在の世論調査の結果に表れているが、ここにきて雰囲気が変わりつつある。
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