大河ドラマ「軍師官兵衛」放送を機に観光誘致を盛り上げようと、福岡の自治体は一定程度の盛り上がりを見せているが、「テレビ離れ」が進む昨今、「テレビ放送に託す」懸命な姿は、時代との逆流感が否めない。「テレビ番組が持つ視聴者への影響」は以前よりも大幅に低下しており、「そこそこ視聴率を取ったとしても効果はほとんど見込めない」のがテレビ界の現状だ。まして、城の天守閣もない福岡に、「城跡に意味を持たせる」くらいで果たして観光客を魅了することができるのか。兜(かぶと)をかぶって「黒田官兵衛」と言い続けていればなんとかなるという雰囲気に、「時代錯誤」「状況認識不足」が伝わってくる。
大河ドラマは、日本での放送後に台湾テレビ局でも放送される(字幕付き)のが通例だ。台湾テレビ局の関係者に聞くと「大河ドラマでは篤姫、歴史モノでも大奥。最近では、福山雅治さんの『龍馬伝』が人気でした」と話す。だが「軍師官兵衛」については、「厳しいでしょうね。放送するかどうかは決まっていませんし、台湾側も購入する義務があるわけではない。ストーリーも地味ですし、日本の歴史上人物としても『黒田官兵衛』はさほど知られていないでしょう。ジャニーズの岡田准一さんの人気に頼った番組でしょう。岡田さんは台湾での吸引力はさほどありませんし、日本でもトップクラスの人気とは言えません」と辛辣な指摘・・・。
「たしかに『篤姫』の人気はすごかったです。『篤姫』放送後、舞台となった鹿児島を訪れる台湾人観光客も激増しました。ただ、『軍師官兵衛』を放送したところで、福岡に興味を持つ台湾人が増えるかどうかは疑問ですね」。台湾放送局が日本ドラマの購入をするかどうかの目安は「日本での視聴率」になるが、視聴率が高すぎると購入費用も上がる傾向にあり、見送られることもある。一方、視聴率が低くても費用が下がることで購入されることもある。視聴率以外には「番組内容」も加味。「大奥」「篤姫」など、世界各国に共通するメロドラマ的な「女性」のストーリーなどはウケがいいが、日本人にしかわからないような感覚の作品や、戦闘シーンが多い作品は敬遠されるのが現実だ。
大河ドラマ放送で観光誘致に火をつけようと躍起になる福岡。しかし、海を渡った台湾では、様々な要因から『軍師官兵衛』に関しては冷ややかな視線が送られているようだ。
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