福島第一原発事故により避難した人々の現状と、「原発事故子ども・被災者支援法」の課題を考えるフォーラムが1月31日、福岡市で開かれた。避難者自身が交流し寄り添う「ふわりネットワーク・福岡」(芝野章子代表)などが主催し、避難者や支援者ら約30人が参加した。
同フォーラムは、2回目。支援法が支援対象地域に留まる権利、避難する権利、帰還する権利を明記したのを受けて、九州へ避難・移住した人たちの避難した理由や置かれている事情の違いを超えて、避難・移住者同士が交流し、本当に必要な支援を実現しようと開かれている。
フォーラムでは、九州への避難者の現状が報告された。避難対象地域以外からの自主避難が多く、行政による支援が届かず、孤立しているケースも生まれている。また、避難の長期化にともない、精神的負担、経済的負担が増大している。「避難生活は限界」「避難者は疲れてきている」との声も出ている。
「ふわりネットワーク・福岡」の芝野代表も避難者の1人。群馬県から6歳の息子と一緒に福岡県に避難している。「自主避難した人には、放射能の危険を知っていたから、周りの反対や家庭の崩壊を覚悟してでも子どもを守りたい一心で、すべてを投げ出して避難した人もいる。もう避難した時点で疲れはピークです。『疲れているなら休んでください』と寄り添う支援をお願いしたい」と訴えた。
国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花理事が、福島の被災地の現状に触れながら、子ども・被災者支援法について講演。チェルノブイリ原発事故後のウクライナでの調査結果で、内分泌系や消化器系などの病気が増加し、がん以外にも低線量被曝のリスクがおよんでいることを示した。福島でも、甲状腺調査で悪性・悪性疑いが59件発見されており、「被曝との因果関係について論争があり、今の段階ではっきり言えないが、父母にとって避難するもっともな理由になっている」と述べた。
満田さんは、現在実施されている健康調査・健康管理について、県民健康管理調査の対象が福島県民のみ、特別な健診は避難区域からの避難者のみで、甲状腺がん、心の健康、生活習慣病のみに焦点が当てられている不十分だと指摘。「対象地域の範囲拡大、検査内容の拡充、情報公開のルール確立」を求めた。
支援法について、「居住、避難、帰還を選択する権利を尊重し、それぞれを支援、健康被害の未然防止、被災者の意見の反映という基本理念はすばらしいが、具体的な施策を定めた基本方針は問題がある」として、「一番の問題は支援対象地域が狭いことだ」「自主的な避難への施策が少ない」などの問題点を挙げた。支援対象地域の拡大、健診・医療費減免の具体化、借り上げ住宅の長期の延長、被災者らとの常設の協議機関の設置などが必要とした。
「3・11から3年。被災者・避難者の課題、悩みも変わってきている」と語った満田さん。「当初は住まいをどうするか仕事をどうしようかと、生きるのに必死だった。今も経済的な状況は変わっていないが、帰還するか移住するかなど、10人の避難者がいれば10の悩みがあり、きめ細かな支援、そして自立支援が求められている」と述べ、支援法に限界があるが、被災者をつなげ合い、支援に役立つ内容があるとして、自然体験学習(保養)の九州での実施など、支援法の活用を呼びかけた。
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