福岡空港周辺で不動産業、建貸事業さらにパーキング(駐車場)事業を展開している(有)博多の森不動産が、昨年、新事業で海外初進出を果たした。数ある国のなかで、同社が選択したのはASEANの一員として注目を集めるカンボジア。4月には海の家をオープンさせ、その後、和食中心の飲食店を2店舗開店させている。海外進出の構想から1年。同社代表の曽根崎淳氏にカンボジア進出からこれまでを振り返ってもらった。
店があるのは、海辺のシアヌークビル。3店舗とも近隣にある。「目が届きやすいこと、人手が足りなかったら、補い合えること。小資本では近隣に集中的に出店するのがセオリー」と出店の経緯を語る曽根崎氏。欧米からの進出企業が多い地域だけあって、バカンスを海辺で過ごす外国人観光客も多く、自然と日本食の代表である寿司がメニューの中心となった。
<教育の場所として>
事業を軌道に乗せることと同時にやりたいことがある。それはカンボジア従業員への教育だ。3つの店舗で働きながら、英語や中国語、日本語などの言語、ビジネスマナー、質の高いサービスを身につけて、ひとつでも上のレベルの仕事に就いてほしいとの願いだ。近隣には、外資の5つ星ホテルがひしめいており、そのホテルに就職ができるような従業員を輩出していきたいと考えている。雨季で雨の強い日は海の家にほとんど客が来ない日もある。そんなときは、海の家を語学教室として活用するプランもある。
<従業員にも変化が>
海の家スタートから半年以上、従業員に変化はあったのか。「まず笑顔がぜんぜん違う。お客に対しての笑顔が自然と出るようになった」とうれしそうに語る曽根崎氏。注文を取る際には、膝を落とし、お客の目線に合わせるようになった。日本式のサービスも少しずつ身についてきた。朝礼では、日本語で挨拶を繰り返す。理解できる日本語はずいぶん増えているという。「日本語を覚えることが楽しい」とカンボジア人従業員。ただし、初めから順調だったわけではない。「根気と誠実さが必要。メンツを重んじる国民性。大勢の前で叱ってはいけない」と曽根崎氏。離職率の高さが各日系企業では悩みの種だが、同社においては辞めていく従業員は少ないという。「従業員の多くは10代。彼らにとっては生活を変える大きなチャンス。カンボジア人に幸せになってもらいたい」この気持ちが根底にある。
<営業活動に注力>
昨夏から水上バイクのレンタルを開始。数百ある海の家に、営業活動を行ない、顧客から水上バイクのリクエストがあれば、同社を紹介してもらえるように、地道に営業を続けている。またボートによる離島めぐりをスタートさせるなど、他社がやっていない新しいことに次々と挑戦している。
今後は、アンコールワットのあるシェムリアップや首都プノンペンに次ぐ第3の観光地として、ツアーに組み込んでもらえるように働きかけていく予定。日本人にはまだあまり知られていない魅力をアピールしていきたいという。
▼関連リンク
・(有)博多の森不動産
・海の家 Blue Ocean
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