＜HUNTERが報じた数字のからくり＞
　保護者の反対意見を無視して強行した「中央保育園」（運営：社会福祉法人福岡市保育協会）の「園児募集」の実態について、福岡市のニュースサイト「HUNTER」は、０歳から２歳児までは定員オーバーとなっているものの、３歳児クラスは６名、４歳児クラス７名、５歳児クラスには12名の空きがあり、逆に25名の定員割れで、全体でも300人に達していないことを報じたが、データ・マックス取材班もその事実を確認した。

　高島市長は１月14日の定例記者会見で「中央保育園に関しては、今、一次締め切りの申し込みの時点で、すでにもう昼間はお断りをしなきゃいけないぐらいオーバーしているんですね」などと、記者クラブ所属記者の質問に対して答えていた。

　ところが、確認取材をしたところHUNTERが報じたとおりの入園希望者数だった。そもそも、２つの保育園を併設させ、最大収容300人とすること自体に問題がある。

　２月４日の「福岡市・中央保育園　一部会派から300人定員に疑問の声」で報じたとおり、ひとつの保育園で最大定員が300人というのは、大きすぎる規模だ。とくに移転後の新中央保育園の場合、園庭が狭すぎて、遊戯や運動などを行なう際にすし詰め状態になることが予想される。怪我などのリスクが生じるほか、災害発生時の避難で混乱する可能性が高い。福岡市は、その点についてまったく考慮していない。

＜50～60人規模の保育園が適正規模＞
　長く中央保育園問題に取り組んできた日本共産党の中山郁美福岡市議（早良区）は、HUNTERが報じた園児募集の実態について「３歳児以上保育で需要が高くないことに加えて、今回の中央保育園の不透明な問題もあり、定員割れ状態になっているのではないでしょうか」と分析。「50～60人規模の定員の保育園を数カ所作るのが、適正だったと思います」と、中央保育園移転事業のあり方そのものに疑問を投げかける。

＜市の帳尻合わせに憤る保護者＞
　移転予定地への移転に反対してきた中央保育園保護者の会前代表の堀田剛氏は、弊社の取材に対して、次のようにコメントしている。

　「定員が足りない傾向にはないことは、もともとわかっていた話でした。ところが定員を倍増させて、多額の税金を使ってやりましたと宣伝し、予想以上に申し込みがあったと喧伝したのは、数字のごまかし。子どもたちもどんどん大きくなるわけで、年齢構成的にバランスが悪くなる。保育園運営ではありえないこと。にもかかわらず、市は計画を強行し、ふたを開けてみたら、定員は埋まっていないのが実態です。夜間のほうに、市や区は延長保育扱いにして、お金を余分に払って入園するよう誘導しています。無理やり帳尻合わせをしてごまかす福岡市のやり方に、市民の皆さんも気づいていただきたいと思います」

　待機児童解消といえば、いかにも聞こえがいい。子どもたちと働く親たちのために、福岡市は精一杯努力していると思わせたいのだろう。しかし、これまでにHUNTERが報じたとおり、移転用地取得費や補助金、さらには追加工事費などで約13億円もの税金を投入しながら、40名程度の待機児童解消しかできないというのが実情だ。中央保育園の移転事業は、費用対効果を考えない愚策だと断じざるを得ない。

　保護者や現場の保育士たちの思いを無視して、幼い子どもに危険がつきまとう土地への移転を強行した高島市長は、何の痛みも感じておらず、反省の色すら見せようとしない。園児募集に関して、都合のいい数字だけを、記者クラブを通じて垂れ流させたことは、あきらかに市民への背信行為だ。

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