<ひとりで師匠を決め、押しかけ弟子入り>
――国交が緊迫化しているなかでのイベントに挑戦するなど、行動力がおありですね。
黒田 家族に言わせると、私は男性なのだそうです(笑)。社交ダンスの道に進もうと決めたときも、実家がダンススタジオだったにも関わらず、誰にも相談せず弟子入り先を決めて、ひとりで門戸を叩きに行きました。押しかけ弟子入りですよ。普通、スタジオに所属してそこから始めるものでしょう。母もびっくりしていました。
――では小さい頃から実家のダンススタジオで学んでいたわけではないのですか。
黒田 踊りより、友だちと遊ぶことに夢中でした。あまりダンスをしたいとも思ってなかったですね。でも16歳の頃、当時世界大会のチャンピオンとなった社交ダンスの先生が福岡に来られて、その踊る姿を見た時、「この道に進みたい!」とひらめきました。そこで高校を卒業してすぐ、日本でも有名なチャンピオンの先生に弟子入りしたのです。
――その方は、最初に憧れた先生とは別の方ですか。
黒田 そうです。しかし修行を重ねるうちに、最初にその先生のもとでも学ぶ機会に恵まれました。他にもイギリス人のコーチャーから、国際的に通用する技術を学べたりと、非常に恵まれた良い経験をしてきたと思っています。そして海外の選手権大会にも随分と出場させていただきました。しかし競技の世界で根を詰めて行なう社交ダンスに疑問を感じるようになって以来、指導はできるものの、自分が踊るとなると、どうも自分のやりたいことと違う、という気持ちが芽生えて、考え込んでしまうようになり、もっと「自分のカラーが出せるような作品を創りたい」と強く思うようになりました。
<社交ダンスで表現したいのは「男女の愛」>
――社交ダンスは、文字通り「社交のためのダンス」であって、競技や鑑賞というものとは少し違うのかな、というふうに思っていました。
黒田 社交ダンスはふたりでないと踊れませんから、そこが社交と言われる所以でもあり、難しいところでもあります。そのなかで何かを表現したいという思いは、踊り手それぞれにあると思いますが、やはり男女で踊る以上、愛を表現することは欠かせません。出会いであったり、別れであったり。恋愛だけでなく人生における男女のストーリーが社交ダンスにはある。男女の仲で生じるドラマを体で表現しているのが、社交ダンスの魅力です。
――それが競技では表現しにくくなったということでしょうか。
黒田 競技では、社交ダンスがスポーツ化しているところがあって、どんどんと技術を競い合うようになってきました。スピードや、いかに足を挙げるかなど、身体性に重きを置くので、芸術性を追求するのが難しくなってきたのです。そこで競技から離れたのですが、今は、本当に様々な愛を、自分なりの表現で踊りたいと思いますね。身体能力の高さを追求するだけではできないことがある、と気づいたからこそ、今の私があるのだと思っています。
――ご家族が男性的だとおっしゃるのもわかるような気がします。
黒田 でも踊ることによって平和を伝えようというのは、女性的でしょ? 男女の仕事には、やはり性差があると思います。もちろん社交ダンスは男性も踊りますが、私は女性として、社交ダンスという文化活動による平和の普及を行なっていこうと思うのですよ。
――ありがとうございました。
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