山口県長門市にある湯本温泉の老舗ホテル「白木屋(しろきや)グランドホテル」(白木清司社長)が山口地裁から破産開始決定を受け、先月31日事実上倒産した。宿泊予約者が居たため2月3日のチェックアウトまで営業し、150年の歴史に幕を閉じた。
代理人弁護士によると同ホテルは1月30日、山口地裁に自己破産申請。地裁は同日、破産開始を決定。 破産管財人は猪俣俊雄弁護士。個人資産も使って経営再建を目指してきたが、資金繰りに行き詰まったという。負債は約22億7000万円。
同ホテルは1864年に創業。客室118室、収容人員約600人で、湯本温泉では大谷山荘(132室)に次ぐ最大級の宿泊施設で、過去2回にわたり将棋の名人戦も行なわれた県内でも格式の高い老舗ホテルだった。
湯本温泉旅館協同組合によると、湯本温泉はここ数年、団体客の減少などで宿泊客数が落ち込んでおり、バブル期の1991年には36万人、また山口きらら博があった2001年には32万人だった宿泊客が、年々減少し昨年は21万人にまで落ち込んだという。
白木屋グランドホテルのある長門市は、安倍総理の本籍地 (旧山口県大津郡油谷町)であり、選挙区も山口第4区(下関市・長門市)。総理のお膝元での老舗ホテルの倒産は、アベノミクスに期待する地元経済に暗い影を投げかけている。
勤王の志士を多数輩出した山口県は、4年後の2018年に明治維新(1868年)発足から150年を迎える。昨年12月3日、2016年のNHK大河ドラマが吉田松陰の妹、文(ふみ)が主人公の「花燃ゆ」と決まり、舞台となる萩市はもちろん、隣接する長門市も観光振興の起爆剤になると期待を高めている矢先だった。
最近は1泊2食付きで1万円を切る格安観光プランが増えてきている。白木屋グランドホテルの倒産の背景には、高級と低料金体系のホテル・旅館に挟まれて苦しい経営を余儀なくされていた実態が浮かび上がる。九州を含め観光地の宿泊施設の多くも共通の悩みを抱えており、その経営形態に暗い影を投げかけている。
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<150年の歴史に幕を閉じた閉店の挨拶>(「白木屋グランドホテルのホームページ」より)
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