<「穀物の市場安定供給のため」と言うけれど>
日本が消費する小麦・大麦・とうもろこし・こうりゃん・大豆などの穀物類の約70%は、海外から運ばれる。博多港もその一端を担っている。運ばれた穀物類は、一度サイロに収納され、それから製粉・製麦・精油・飼料工場へと送られる。博多港サイロは年間約27万トンの穀物の供給を手がけており、安定供給の要として、九州地区をはじめとした穀物の重要拠点だ。
この博多湾を舞台にした事の発端は、この博多港サイロ(株)の株式の一部を日清製粉に売却するというものだ。それも、第三セクターである博多港開発(株)が保有する株の一部を売却するというのだ。福岡市港湾局は「この博多港サイロ(株)の現在の株式比率は、博多港開発が55.2%、それ以外の44.8%を日清製粉含めた製粉会社や流通関連会社20社が保有している」と説明した。
では、55.2%を保有する博多港開発はどのように考えているのか。「日清製粉自身、このサイロの絶対的取扱量が多い。今度の新工場が本格稼働してきたら、現在の取扱量全体の36%から50%に上るかもしれない。もちろん、須崎ふ頭内にある上組のサイロも併用するはず」と、新工場に対する供給に比例して、株式は譲渡すべきとの考えを示した。売却により、今後の穀物の安定供給が図れるとしたのだ。
ちなみに、現在の日清製粉が保有する博多港サイロの株の比率は3.41%。ほかの製粉会社の保有比率に比較しても、あまり変わらない数字である。しかし今後、日清製粉が持つ博多港サイロの株式保有率を20%または25%に引き上げることにしている。それにともなって、博多港開発が持つ株式を、現在の55.2%から33%程度に大きく引き下げる見通しである。「比率は低下するものの筆頭株主は維持する」としているが、日清製粉と肩を並べ、博多港サイロの株式保有の両巨頭となるのはたしかである。
しかも、これだけの株式を保有すると、まずは非常勤役員を送り込むことができる。その後、常勤役員を送り込むことによって、発言権を大きく持つことが可能なのだ。これでは、不平不満が出るのは当然のことである。
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