「日本の国境線(領土)を正確に言えますか?」と質問して、正確に答えられる日本人がどれだけいるだろうか。学問的に研究している人や、自衛官や海上保安官を除けば、日常の仕事や生活で、国境線(領土)を意識することはほとんどない。「それは国家の問題であり、個人には関係ない」と思っている日本人が大多数であろう。
戦後、海外旅行をする日本人は右肩上がりで増加している。海外旅行に出発するときは、空港や港で所定の手続きを取らなければならない。日本から一歩外に出れば、日本国籍を証明してくれるパスポート(旅券)を必ず携行し、渡航先の国によってはビザ(査証)が必要になる。
日本からの出国も、渡航先の国から日本に帰国するときも、手荷物のチェックを受ける。持ち出し、持ち込み禁止のモノを持っていれば、その場での没収や、逮捕されるケースがある。課税対象のモノを持っていれば、関税を支払う義務も生じる。
これら一連の流れは、国境線を意識しようがしまいが、国境線を通過するために必要な万国共通の手続き・規則であり、誰もが海外旅行に行くときに経験することである。
日本人は誰でも自由に国境線を通過できるものだと考えているが、北朝鮮のように出国はおろか、パスポートの取得さえ自由にできない国があることを知るべきである。また、自分の家(土地)が他人に不法占拠されたとき、どのような対処手段を講じるかを考えれば、自国の領土が不法占拠されたときの国家の行動は、自ずと決まってくる。
<領土問題は個人の問題>
領土問題とは「自国の領土が不当に奪われている状態をそのまま放置している国家が主権国家と言えるのか?」と、日本人に提起している。
ドイツの法学者イェーリングは『権利のための闘争』のなかで「隣国によって1平方キロメートルの領土を奪われながら放置する国は、その他の領土も奪われ、遂には領土をすべて失い、国家として存立することをやめてしまうであろう」と、指摘している。
もっと簡単に説明すれば、自分の家(土地)に他人が勝手に入ってきて居座り、「ここは今日から俺の家だ。お前は出て行け」と言われているようなものである。他人を排除するための手段を講じなければ、不法に居座り続けられて、泣き寝入りすることになる。
これと同じことを国家レベルで火事場泥棒のごとく強行したのが、ロシアによる北方領土、韓国による竹島の半世紀以上にわたる不法占拠なのである。国境線・領土問題は、個人レベルの問題に置き換えて考えることによって、日本人1人ひとりに当事者意識が生まれてくるのである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。現在は、日本防災士機構認証研修機関の(株)防災士研修センター常務取締役。著書に、『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)、「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)。11月25日には、夕刊フジに連載中の企画をまとめた『探訪 日本の名城 上-戦国武将と出会う旅』(青林堂)を発売。公式HPはコチラ。
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