<ファンドの餌食になり、解体か!>
ソニーは2月6日、「VAIO(バイオ)」ブランドで展開してきたパソコン事業からの撤退と、テレビ事業の分社化などの大規模なリストラを発表した。トリニトロンカラーテレビや、携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」などのヒット商品が世界を席巻したソニー。今や、「SONY」ブランドの輝きは消えてしまった。漂流を続けるソニーはどこへ行くのか。
<パソコンは売却、テレビは分社化>
VAIOは1996年に登場した。映像や音響の技術をつぎ込み、洗練されたデザインは世界的に人気を集めた。ソニーが家電からIT(情報技術)分野に本格進出する契機になった商品だ。しかし、最近はスマートフォン(スマホ=多機能携帯電話)やタブレット(多機能携帯端末)の普及でパソコン市場が縮小し、VAIOが売れなくなった。
ソニーのシンボルともいえるテレビ事業は、韓国メーカーなどとの競争で10年連続の赤字が見込まれる。
とうとうパソコンとテレビの2大事業に手をつけざるをえなくなった。VAIOのパソコン事業は、投資ファンドの日本産業パートナーズ(東京)が主体の新会社に売却する。
テレビ事業は7月をメドに分社化する。テレビは完全子会社として続ける方針だ。パナソニックがプラズマテレビから撤退したように、テレビ事業の撤退なくして、ソニーの再生はないというのがマーケットの見方である。1960年代からソニーの屋台骨を支えてきただけに、簡単に撤退できない事情があるのだろう。
<長期信用格付けは「投機的」に格下げ>
テレビやパソコン、デジタルカメラ、スマホといったデジタル家電は、ソニーの代名詞。しかし、2008年のリーマン・ショック後、エレクトロニクス(エレキ)事業の業績は回復しなかった。主力のデジタル家電が振るわず、12年3月期まで4年連続で最終赤字になった。デジタル家電は技術革新のスピードが速まっており、新製品を出してもすぐ価格が下がり、儲けが出ないためだ。
12年4月に社長に就任した平井一夫氏は、エレキ事業の再生とテレビ事業の黒字化を最大の経営課題に掲げた。13年3月期は、米ニューヨークの米本社ビルや保有株の売却で全体では黒字転換を果したものの、エレキ事業の赤字は続いた。
テレビ事業は、今期も250億円の赤字となる見通しで、赤字は10年連続となる。売上高の約6割を占めるエレキ事業の今期の黒字転換という公約も果せなかった。
そのため、2014年3月期の業績予想を下方修正し、純利益が従来予想の300億円の黒字から1,100億円の赤字へと下方修正した。電機大手8社のなかで、純損益の通期見通しが赤字なのはソニーだけ。経営危機に陥っていたシャープでさえ黒字転換する。ソニーの独り負けだ。平井氏の経営者としての手腕に疑問符がついた。
マーケットの評価は厳しい。1月27日、米格付け会社ムーディーズはソニーの長期信用格付けを「投機的」水準に引き下げた。ソニーはジャンク(がらくた)扱いにされたのだ。
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