<納税するのが馬鹿らしくなる>
「福岡市職員も本当に懲りないですね。税金はこちらの都合関係なくしっかり取るのに、税金で給料を貰いながら、強制わいせつ罪で捕まるなんて・・・。ホント納税するのが馬鹿らしくなりますよ」。
こう話すのは、福岡市内のある会社社長。電話口からも、呆れた口調が伝わってきた。
社長が怒りをあらわにした職員の強制わいせつ事件とは、福岡市港湾局の事業計画課長が、昨年12月19日、午後10時半ごろ、JR福間駅構内において、通りがかった女子高校生に抱きついて、体を触るなどをした容疑で逮捕された事件だ。
市港湾局によると、課長は当日、午後6時すぎに退勤。その後9時半ごろまで、博多区内のぎょうざ屋で、港湾局の同僚と飲酒をともなう食事をしていることが確認されている。
課長は、毎日、最寄りのJRを利用して福間駅から博多駅までの区間を通勤していた。大手メディアの報道では、福津市の公共施設としか報じられていないが、事件が起きたのは、通勤で利用する福間駅の構内だった。事件の起きた福津市や隣の宗像市から、北九州市や福岡市へ通学する高校生の通学利用者はかなり多い。課長は、通勤途中で通学する女子高生の姿を見て、なにがしかの思いを抱いていた可能性はある。
<むなしく響く不祥事防止のスローガン>
港湾局のフロアに入ると、「平成25年度スローガン これくらい と思う心が 不祥事へ」という標語が貼られていた。港湾局総務課を事務局に、各課の若手職員を中心に、「港湾局不祥事再発防止プロジェクトチーム」が発足しており、そのなかで考え出されたスローガンだという。
まさに今回の事件は「これくらいと思う心」が起こしたハレンチ事件ではなかったか。
今回の不祥事は、その掛け声とは裏腹に、部下職員を管理指導すべき課長が引き起こしたれっきとした性犯罪だ。軽く扱ってよいものではない。市民の怒りは、事件発覚から抗議の電話が相次いでいることに現れている。
市港湾局の長木芳孝総務課長によると「普段はまじめで、部下からの信頼も厚かった。職場の飲み会でも乱れることはなく、セクハラなどの問題行動は一切なかった」という。課長の所属する事業計画課の職員は、日頃の勤務態度などについて話を尋ねても固く口を閉ざしたままだった。
ハレンチ行為で逮捕される事案は、福岡市ばかりではなく、このところ福岡県職員でも相次いでいる。県では今年1月、不祥事の懲戒処分指針を定めたばかり。今年度、この10年では最も多い7件もの職員不祥事が相次いだ。飲酒運転や性犯罪など不祥事に対する処分が非常に甘すぎると県議会の批判を浴びたことで、46項目にわたる懲戒処分指針を策定した。
<報道がセカンドレイプにつながる>
福岡市職員の飲酒や性犯罪も後を絶たない。2012年には、同じく港湾局職員が携帯カメラで女性のスカート内を盗撮した事件を起こしている。
ジェンダー問題に詳しい専門家は、「男性は軽い気持ちかもしれないが、被害を受けた女性は、自分を責めるほど傷つく。さらに報道を通じて好奇に晒される。セカンドレイプを受けることは深刻だ」という。セカンドレイプとは、レイプや痴漢など性犯罪、性暴力の被害者が、その後の経過において、更なる二次被害を受けることである。とくに報道や裁判過程での証言などがそれにあたる。警察に被害を訴えても、それが公になることで世間の好奇の対象にされてしまい、二次被害を受けるのだ。事件を起こした男にとっては、仕事上のストレスの発散や飲酒して酔いにまかせての行動なのかもしれないが、その欲望のはけ口の対象にされた女性からしたら、たまったものではない。今回の事件では、多感な年頃の女子高生が、親ほども歳のはなれた男性に無理やり体を触られており、心に大きな傷を負ったことは想像に難くない。
<トカゲの尻尾きりで終わらせるな>
現在のところ、事件を起こした課長は、「その場にはいたが、知らない」と否認しているというが、駅の防犯カメラに残されていた映像が決定的な証拠となって逮捕につながっている。もちろん、まだ容疑段階ではあるが、逮捕された事実は重い。
職員の不祥事が相次ぐ福岡市であるが、トップの姿勢が部下職員の行動に現れているのではないだろうか。高島市長は、以前、1カ月不祥事が表面化しなかったことについて自画自賛していたが、またすぐ元に戻った。現象面だけ見て、トカゲの尻尾きりばかりで終わらせては、問題の本質を見失うだけで、根本的な改善にはつながらない。
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