日本のプロ野球チームを経て、台湾プロ野球リーグでゴールデングラブのタイトルを獲得するなど2年間にわたって活躍、その後は韓国に渡りプレーを続けている福岡県出身の小林亮寛投手が、昨年冬も海を渡り、ドミニカで開催された「ウインターリーグ」にトライ。昨年11月中旬から12月中旬までの約45日間、ドミニカの首都・サントドミンゴでの「収穫」について語った。
「ドミニカを選んだのは、慢性疲労回復、身体機能改善とスピードボールを取り戻すための『自主トレ』に最適だったからです。さらには、年中温暖で天気が良い、中南米のなかでも比較的治安が良い、野球環境(練習場所、練習相手)が良く、寒くなっていく日本にいるよりも充実できるということや、メジャーリーガーが多数在籍し一緒にプレーするチャンスがあるといったことも理由に挙げられます」
野球に対して貪欲な小林投手。現役でありながらも「学ぶ、収穫を求める」という姿勢は敬服に値する。「グラウンドやマウンド、ボールなど『ハード面での質の高さ(メジャーリーグとほぼ同等)』で自分の現状のポテンシャルを素直に評価できます。さらには、毎試合、MLBのスカウトや関係者だけでなく日本や韓国のプロスカウトなども球場に足を運ぶため、『各国の最新のルール』や『外国人獲得の傾向』などを把握することができます」と、ドミニカを選択した理由について言及した。
「『ウインターリーグ』には2010年のメキシコ・ベラクルスリーグで初めて参戦しました。今回は2回目のトライになりました。中南米の野球ファンにとってはメジャーリーガーなどが帰国し母国でプレーをするため『本格的な野球シーズン到来』でもあり各国で盛り上がりを見せます。ドミニカの経済状況や社会情勢に触れ、『ドミニカ人選手たちがどういった経緯でメジャーリーガーを目指すのか?』を知ることができました。ひどい貧困からの脱出の道筋です。16歳半ばからプロ契約ができるため少年たちは自分を売り込むため連日トライアウトを受けます。日本では『高校野球』が存在しますが、ドミニカにはありません。多くの野球少年にとって野球はお金を稼ぐための手段なのです。ドミニカ出身の現役のメジャー選手は250名以上、マイナー選手をいれると数えきれないほどだと言います」
ドミニカで自らの能力を高めるだけではなく、「ドミニカでの野球の現状」を目にしてきた小林投手は、昨年まで所属した韓国・高陽ワンダーズとの今後について、次のように語った。「シーズン終了後すぐに再契約のお話しを頂きました。しかし、2年間アピールした結果、韓国プロ野球入りに繋がらなかったことや『抑え』としての起用では外国人先発投手を求めるアジアの球団に売り込みにくくなってしまうこと、試合数が48試合と少ないうえ、チームがリーグに所属しておらず公式成績や順位、タイトル争いなどは関係がないので『数字に反映されないプレーヤーとしての価値』が評価されずモチベーションの維持が出来なくなってしまいました。そのため高陽ワンダーズでの3年目のプレーを断念することにしました。監督の金星根さん、高陽ワンダーズには2年間も挑戦する機会を頂き感謝の気持ちでいっぱいです。挑戦は失敗に終わりましたがとても素晴らしい経験を積むことが出来ました。また1つ成長出来たことは誇りに思います」
現状に満足することなく、常に「向上」を求める小林投手。「現役」にこだわり続ける姿勢に野球ファンも感銘を受ける。また、オフシーズンには九州内の少年野球チームなどの選手を指導しており、日本、海外での経験を活かした指導法に、周囲からの信頼も厚い。現役投手として、さらには、「野球の伝道師」として、小林投手の今後に目が離せない。
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