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2014年2月17日 07:00
法政大学大学院政策創造研究科 教授 小峰 隆夫 氏

 「2020年東京五輪」が決まり、東京一極集中化が加速、地方都市の在り方が問われ始めている。その際、必ず話題に上るのが「人口減少」問題だ。そして、この問題とセットで「少子化」「高齢化」が語られる。しかし、「ポイントはそこにありません」と小峰隆夫氏は語る。

<ブロック中心都市には東京と同じような機能が集積>
 ――先生にとって「東京」「地方都市」とはどのようなイメージでしょうか。

 小峰隆夫氏(以下、小峰) 我々はよく「都市部」と「地方部」という分け方をします。しかし、「東京」と「地方都市」という分け方は正しくありません。たしかに東京は日本の首都で、すべての機関、施設等が集中しています。しかし、次に来る「ブロック中心都市」(札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡etc.)もミニ東京のようになっており、東京と同じような機能が集積しています。その次に、全国の県庁所在地のある都市が続き、その下あたりからいわゆる地方都市となります。この地方都市では、人口減少と市街地の空洞化がすごい勢いで進んでいます。

 ――「ブロック中心都市」レベルであれば、立派にやっていけるのですね。

法政大学大学院政策創造研究科 教授 小峰 隆夫 氏 小峰 ブロック中心都市には、現在すでに立派な施設があり、海外から来たアーティスト等もブロック中心都市を回ることになります。そこに行けば、大体必要な機能がすべてあるからです。たとえば、九州ブロックであれば福岡がそれにあたります。逆に言うと、九州ブロックという単位で考えていくことが必要になってきます。各都道府県単位で個性を発揮していくことは大切ですが、現実的にはだんだん難しくなってくると思います。九州の人が大阪、東京に行くのは大変ですが、福岡であれば集まることができます。この観点だけから言えば、道州制に近いイメージです。

<人口が減ることを前提にコンパクトシティを目指す>
 ――では、「ブロック中心都市」以外は、かなり厳しくなっていきますか。

 小峰 都市はそれぞれ何を目指すのかを明確にすることが必要です。東京であれば日本の中心であり、ニューヨーク、ロンドン、パリのような世界中からビジネス、情報が集まる都市を目指すことになります。ブロック中心都市は各ブロックの中心になりますので、準東京的機能を完備することを目指すと思います。次に続く県庁所在地の都市は、準東京ほどでないにしても、一応の都市機能をすべて備えることを目指すと思います。その下の地方都市ですが、「素晴らしい温泉施設があります」とか「立派な教育施設があります」という個性を競い合うようなことをやっていく必要が出てきます。

 ――地方自治体の首長は、どのように考えて行くべきなのですか。

 小峰 人口が減少していく場合、人口は、地方都市⇒県庁所在地の都市⇒ブロック中心都市⇒東京の順に流れていきます。つまり、現在人口の多いところはますます多くなり、少ないところはますます少なくなっていきます。
 地方自治体の首長はこのことをしっかり認識することが大切です。地方の公共団体がさまざまな計画を立てる場合、人口を増やすことがテーマとなることが多いと思います。しかし、これは正しくありません。何十年先には、東京でさえ人口が減ることになり、日本全国で人口が増える自治体はなくなります。
 人口が減ることを前提に、いわゆるコンパクトシティをイメージして計画を立てる必要があります。人口が疎らに点在している場合、行政サービス等は非効率的で、高コストになってしまうからです。

<20年後の地域ビジョンを住民に示すことが必要>
 ――ところで、世界の都市で成功したモデルはどこかありますか。

 小峰 私は都市問題の専門家ではありませんが、理念的に考えられることや話に聞いたことはあります。たとえば、何が大切かというと、人口が一度広がって点在してしまった後で、中心に集まっていただくことはとても困難であるということです。郵便配達とか介護サービス等が必要な高齢者である住民の1人ひとりに移動を強いることになるからです。
 そこで、行政はある程度長期ビジョンで、都市計画を住民に示してあげる必要があります。つまり、10年後、20年後には、中心部からこの辺の地域までは、医療とか教育とか現在と同じ公共サービスを保証します。しかし、その地域から外れた場合は高コストになるので、今と同じサービスを受けることは難しくなるということを説明する必要があります。そのうえで、住民が自分で長期的に判断し、中心部に集まるなり、それぞれ結論を出せば良いのです。結果的に、無理なくコンパクトシティが実現できるかもしれません。

 ――それは、良い考えですね。

 小峰 これは、私も理念的に正しいと思いますが、実現していくのは大変です。しかし、首長はもちろん、住民もこのような考え方、ビジョンで都市を考えていく必要があります。
 今までは「これもやります、あれもやります、こんな良いことがあります」というビジョンでしたが、もっとメリハリをつけた都市行政が必要になってくるわけです。
 今、住んでいる人たちを前提に考えるのではなく、国や地方公共団体がサービスしやすい場所に集まってもらう必要があります。そのためには、できるだけ早めに住民に情報を提供しなければなりません。

 ――急に言われても困りますし、だからといって過度に楽観的期待を持たされても困ります。

 小峰 そうです。しかし、首長になるとそれが言えないのです。それは、人口が減っていくことを前提にした政策は出しづらいのではないかと思います。もちろん、先進的なところでは、そのような政策を進めているところも複数出てきています。
 たとえば、社会資本整備の道路、学校、橋等は従来と同じ規模でやる必要がなくなります。その予算は他に回せますし、現在あるものでも、補修の必要のあるもの、必要のないものを分け、全体のコストを下げることができます。

(つづく)
【金木 亮憲】

| (中) ≫

<プロフィール>
小峰 隆夫 氏小峰 隆夫(こみね・たかお)
法政大学大学院政策創造研究科教授、日本経済研究センター 理事・研究顧問。1969年東京大学経済学部卒。同年経済企画庁入庁、経済企画庁長官秘書官、日本経済研究センター主任研究員、経済企画庁調整局国際経済第一課長、同調査局内国調査第一課長、経済企画庁審議官、経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長を経て現職。著書として、『政権交代の経済学』『人口負荷社会』『日本経済論の罪と罰』等多数。


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