中国共産党の第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)は、2013年11月12日に4日間の会議を経て閉幕した。習近平政権は、15分野の60項目で改革を決めた。経済にとどまらず政治や社会までの幅広い分野の改革を打ち出している。三中全会を現地で取材した、「中国経済新聞」編集長の徐静波氏に話を聞いた。
<国民は政府に新しい経済刺激策を期待>
――話を政治から経済に移します。2013年の経済についてお話いただけますか。
徐 静波氏(以下、徐) 中国経済が直面している構造問題はとても深刻です。国有企業と政府主導の経済は市場の効率に重大な影響をおよぼしています。民営企業が頼みとしている輸出や国有部門が主導する投資がともに力を失っています。
問題点は、3つあります。1つ目は、これまでの経済政策は輸出依存であったため、内需の充分な拡大ができていないことです。2つ目は、鉄鋼、電力、石炭などエネルギー資源の生産能力が過剰になっています。とくに鉄鋼は、公共投資が激減したため、建設資材とともに、50%近く生産過剰になっていることです。3つ目は、内需拡大をする新しい材料が見当たらないことです。従来、国内経済へのカンフル剤として、大規模な公共投資が行なわれてきましたが、役人の腐敗と連動、不動産バブルの元凶となり、現在ではそのような政策はとられていません。
そこで、国民は、中国政府が、何か新しい刺激策を出すことを期待しておりました。今回の第18期「三中全会」は、そのような状況下で開かれたわけです。
<習近平政権の経済刺激策は実体経済に直接的な影響>
――経済の分野で決まった主だった政策はどのようなものですか。
徐 今回の改革は「市場経済、民主政治、先進文化、調和社会、エコ文明」と全方位の改革です。改革の内容は、「公有経済と非公有経済(民営経済)の同等重視」「市場の障壁を撤廃して規制緩和を実施」「近代的財政制度の確立」「土地改革は財産権を先行、農民に財産権を付与」「自由貿易区建設を急ぎ、国際経済とリンク」「裁判権と検察権の独立を担保」の6つで、うち5つは実体経済に直接的な影響をおよぼすものとなっています。
「公有経済と非公有経済(民営経済)の同等重視」とは、私人が独占業種、たとえば金融、エネルギーおよび電力、運輸、電信等公共サービスに投資し、踏み入ることを、政府が認可する可能性があることを意味しています。これによって、民営企業の比重が増加することは容易に想像できます。
「近代的財政制度の確立」においては「予算制度の透明性」を実現して、中央・地方政府が財政予算を「ブラックボックス化」することを禁じています。
「土地改革は財産権を先行、農民に財産権を付与」は、都市と農村の二元構造の解消につながるとも言える改革です。これまで、都市と農村の二元構造は、都市と農村が一体化して発展していくことの障害になっていました。この体制メカニズムを健全化し、農民層を近代化過程に参入させ、果実をともに享受できるようにするというものです。
<プロフィール>
徐 静波(じょ・せいは)
東海大学大学院(文学研究科専攻)に留学後、同大学研究員、在日中国語日刊紙の副編集長を経て、2000年3月に株式会社アジア通信社を設立して代表取締役に就任。01年に日本初の中国経済専門紙「中国経済新聞」を創刊、編集長を兼任。04年にモバイル放送の番組「中国経済最前線」に企画、出演。08年に対中国人社会の中国語日本情報サイト「日本新聞網」を開始。09年まで早稲田大学特別非常勤講師。著書として「株式会社中華人民共和国」「日本経済の行方」他多数。
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