中国共産党の第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)は、2013年11月12日に4日間の会議を経て閉幕した。習近平政権は、15分野の60項目で改革を決めた。経済にとどまらず政治や社会までの幅広い分野の改革を打ち出している。三中全会を現地で取材した、「中国経済新聞」編集長の徐静波氏に話を聞いた。
<農村戸籍と都市戸籍の差別が漸次解消されていく>
――着々と、準備は進められていますね、2014年の中国を占っていただけますか。
徐 静波氏(以下、徐) 今回の第18期「三中全会」で決まった内容を見て、3つのことがイメージできます。1つは、国の資金は実体経済、とくに製造業により多く回るようになることです。現在でもその兆候が出始めていますが、銀行も、不動産等のマネーゲームでなく、製造業等企業育成の融資を心がけることになると思います。2つ目は、内需拡大のための大規模な都市化が中国全土で実施されることです。ただし、これは従来のような、地方自治体の指導者が自分の成績のために、無理やり推進していたものと異なり、健全なものです。3番目は、社会制度改革の一環で、農村戸籍、都市戸籍の差別が漸次、解消されていくことです。今、農村戸籍の場合は、教育も医療も年金等あらゆるものが差別されており、ローンも組むこともできません。
――農村戸籍、都市戸籍の差別が漸次解消されれば、画期的というより膨大な活力、エネルギーが生まれますね。
徐 そうです。今、中国で農村を離れて都会で働いている労働者は2億5,000万人いると言われています。さらに、毎年2,000万人が農村から都会に出てきますので、習近平政権が今回の改革のゴール目標としている2020年には、中国の農村人口の約半分の4億人が都会で働いていることになります。
当然、4億人が住む家が必要になりますので、公営住宅、マンションなどの準備も政府主導で進めていくことになります。今後、10年間で、中国のインフラ整備の投資金額は約900兆円と言われています。当然、家だけでなく、車や電化製品も必要になります。
<国主導から民間主導体制へ文化の輸出も視野>
――最後に、少し文化に関してコメントいただけますか。
徐 今回の第18期「三中全会」の項目のなかには、中国の文化体制を改革するという内容も2つ含まれています。1つは、今までの中国の文化活動は、出版社、マスコミ等を含めて、すべて国が主導していました。それを、漸次民間参入可能に移行していこうというものです。他もう1つは、中国は、今後、自国の文化を海外の人に知ってもらうために、文化の輸出に力を入れていくというものです。
また、1人っ子政策の緩和が決まりました。これまでは、「夫婦ともに1人っ子の場合は2人目の出産を認めていた」のですが、今回の改正で「一方が1人っ子であれば、2人目を認める」と調整が行なわれています。
――日本に戻った直後の、お忙しいなか、ありがとうございました。
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<プロフィール>
徐 静波(じょ・せいは)
東海大学大学院(文学研究科専攻)に留学後、同大学研究員、在日中国語日刊紙の副編集長を経て、2000年3月に株式会社アジア通信社を設立して代表取締役に就任。01年に日本初の中国経済専門紙「中国経済新聞」を創刊、編集長を兼任。04年にモバイル放送の番組「中国経済最前線」に企画、出演。08年に対中国人社会の中国語日本情報サイト「日本新聞網」を開始。09年まで早稲田大学特別非常勤講師。著書として「株式会社中華人民共和国」「日本経済の行方」他多数。
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