<過去最大となった福岡市予算案>
福岡市は、2月17日開会の市議会に2014年度当初予算案を提案したが、一般会計総額は7,763億円で前年度当初予算を2.2%上回って過去最大となった。これは、消費税率引き上げに際しての低所得者に対する臨時福祉給付金・子育て世帯臨時給付金の給付に加え、社会保障費や老朽化した公共施設の改修・修繕費が増加することにともなうためである。
歳入は一般財源が3,950億円で前年度当初よりも1.0%増加。市税については、企業収益の回復により法人市民税が増え、新築家屋の増加により固定資産税も増加したため2.7%伸び、2,759億円とこちらも過去最大になる。一方、歳出については、職員退職金の減額で人件費を6億円圧縮。これまで増加が問題視された生活保護費が減少に転じたが、障害者施設介護給付や保育所施設運営費、低所得者対策の給付金などにより、12年度当初予算に比べ、4.7%伸び、約86億円増となった。
主な事業をみると、海外からのクルーズ船誘致のため博多港に入国審査ブースを備えた諸客待合室の整備に約9億円、起業希望者を支援する「スタートアップカフェ」を設置する事業に約5,100万円、グローバルベンチャーの創出に約2,000万円などとなっている。
今回、注目点は、アセットマネジメント推進で、公共施設の維持管理を行なうことを掲げている点と、待機児童対策の2点である。
アセットマネジメント関連では、今回、公民館などの外壁や屋上防水改修や市道の大規模修繕を行なうため、一般会計ベースで、13年度当初予算と比較して、約31%増加の353億円。全体では、約670億円が計上されているが、前年度当初に比べ約130億円増加している。公共施設の老朽化が進むなか、長寿命化を図る必要がある。それにあたっては、点検・調査を実施し、施設の健全度を正確に把握したうえで、維持管理、更新を行なうことが求められる。たしかに、財政出動を抑制しながら、公共サービスの持続的提供が可能となるが、それでも予算の増加は避けられない。
また、14年度当初予算案で待機児童対策として約42億円を計上している。これは、13年度一般会計補正予算で対応する400人分とあわせて、来春までに新たに児童1,200人の受け入れ枠を増やすという。全国的に見ると福岡市の待機児童数は、全国ワーストにランクインされる。その解消のために、定数を増やすというが、問題となっている中央保育園は、移転に際して定数を増やしたものの、一次募集段階で、定員割れをしている状況だ。しかも、定数増にみあった保育士は確保できるのかとの声も聞かれる。
<就労支援事業こそ急務では?>
市の発表した2014年度当初予算案の概要には「豊かでいきいきと人が輝くまちづくり」とある。そのうたい文句は結構だが、気にかかる点も少なくない。たとえば、公共施設維持管理費の増加である。たしかに、施設の改修・修繕が必要ではあるが、どうしても公共事業は甘い主要予測になりがちだ。財政支出の有効性を精査した上で、最小限の投資に抑制しなければならない。
14年度当初予算案の市債発行額は、約708億円。前年比で2億円の縮減ではあるが、依然高いことは変わらない。臨時財政対策債は375億円で約15億円の縮減となっている。今のところ臨時財政対策債は、地方交付税により全額償還されるが、国の財政自体が厳しい状況では、いずれどうなるかわからない。一層の堅実な財政運営が求められるところだ。
市議会各会派の議員からは、ハコモノ建設やパフォーマンスの観光よりも就労対策に力を入れるべきではないかとの声が少なくない。だが、14年度当初予算案をみても就労支援事業はほとんどみられない。その代わりに、特区制度の推進、グローバルベンチャーの創出やイノベーション創出支援事業といった言葉が並ぶ。これらは、新自由主義的な政策で、安倍政権が推進する動きと一致する。20代から30代の若い世代が多く暮らす福岡市で、雇用創出は最優先課題。そのための予算支出がもっと必要なのではないか。
※記事へのご意見はこちら