新聞報道が発端で、東京海上日動火災保険が、自動車保険の保険金の一部を支払っていないことが判明。
永野毅同社社長が2月7日に記者会見を開き陳謝した。
監督官庁の金融庁が「基本的に問題なし」と静観しているため、オリコを経由した暴力団等への問題融資によって頭取交代へ発展したみずほ銀行のように経営責任を問われることはなさそうだ。
2005年、損保および生保各社で保険金の大量不払い問題が発覚。事態を重く見た金融庁は各保険会社に調査を命じ、すでに不払い問題は決着したものと見られていた。
今回発覚した不払いは、自動車事故の相手方に払う見舞金などを補償する「対人臨時費用」。自動車保険にセットで組み込まれることが多く、当時は、相手が死亡した場合は10万円、入院か通院なら1万~2万円を受け取れる契約。金融庁から指示を受け、東京海上日動は05年と06年に、02年4月から05年6月までの3年分を調査した。
東京海上火災は内部調査で把握していながら、「不払いは約1万8,000件あった」としか公表せず、それ以外に最大12万件に上る自動車保険を支払っていないことを報告していなかった。
その一方、未払いに気づいて請求してきた契約者には遅延損害金も上乗せして支払っていた。問題を指摘された同社は事実関係を認め、「今後も請求を受け、契約していたことなどが確認されれば、約款で2年と定めた請求の時効を放棄して対応する」としている。
ここで問題となるのは損保および生保各社が契約者と交わす保険約款が難解であることだ。おそらくほとんどの契約者は事件・事故が発生した後に慌てて約款を見るということが多いようだ。
保険会社と契約者との諾成契約によって約款は発効するが、約款は保険会社が自社に都合よく解釈することが多く、このような大量の不払いが発生する温床になっているとも言われている。
不払い問題の発端は、明治安田生命であった。
05年2月20日、告知義務違反の教唆といった不祥事が発覚。明治安田生命は金融庁長官から団体保険および団体年金保険を除く保険契約の締結および保険募集を2週間(05年3月4日から3月17日まで)停止する命令を受けた。国内保険業界で史上最長となる業務停止命令であった。
続いて7月5日 、90件(約15億円以上)の保険金未払いの問題が発生。これを受けて生保協会の次期会長に内定していた金子亮太郎社長(元明治生命社長)が辞意を発表し、宮本三喜彦会長(元安田生命社長)も引責辞任する事態となる。
これが保険金不払い事件の発端となり、明治安田生命保険だけではなく、他の生保、損保会社の保険金不払い問題に飛び火。業界全体のモラルが問われる不祥事件へと発展することになった。2005年の不払い問題、今回の新たな不払い問題のいずれも三菱系の大手生損保会社によるものである。
最近の生損保業界はアベノミクスによる株価上昇の恩恵を受け、逆ザヤは解消し支払余力を取り返してはいるが、再び株価下落によって運用成績が悪化し、保険金の不払いが発生しないとも限らないのがこの業界の特徴ではなかろうか。
今回の「不払い問題」は保険契約者が"まさかの時"に良心的に対応してくれる保険会社を見直す良い契機かもしれない。
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