2013年は、九州電力にとって厳しい年だったに違いない。従業員の賞与は支給されず、役員報酬も大幅に減額。不動産の売却など、身を削る施策が執られ続けた。電気料金を値上げしたが、それでもなお厳しい環境は続いている。火力発電に頼らざるを得ない状況が続けば、この苦境を脱することは難しいだろう。原発を動かすことができたならば、一気に形勢逆転できるのだが、その見通しも立っていない。本年度の動きをまとめる。
<原発再稼動に向け動くも、見通し立たず>
原発再稼動のメドが立たない。7月8日、原子力規制委員会による原子力規制新基準が施行された。即日、九州電力(以下九電)含む電力4社が新基準での適合性の検査を申請した。申請した原発は川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の2基と玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の3、4号機の2基を合わせた4基。この検査を通過できたならば、原子力発電再稼動への確実な一歩が踏み出されることとなる。
川内原発は火山活動の影響を受けやすいという指摘もなされているが、ともあれ、無事通過することとなれば、原発の再稼動への動きは一気に加速しそうだ。
こと薩摩川内市は、京セラの工場と原発の2本柱が牽引してきた町。原発停止の影響も大きく、再稼動を求める声も少なからずあるようだ。停止後の現地での取材では、原発停止後はとくに飲食業などでの影響が出ているという声を耳にした。原発の新設の話が具体化されつつあったなかでの原発停止である。期待が一気に失望に変わってしまったようだ。
しかし、その一方で原発再稼動への不安も確実にあるようで「福島第一のような事態に陥るのだけは回避してほしい」「地盤がしっかりしているとは言え、危険を孕んでいることは間違いない」と言った声も少なからずあった。薩摩川内市は、川内駅を大改修するなど、新設される予定の原発に対して少なからず期待感を持っていた。それが福島原発大事故の後で、期待、失望、諦めなど、さまざまな感情へと変化していったようである。原発をどう考えたらいいのか、安心して暮らせる方向性を見失っているのが現状と言えそうだ。
一方、玄海原発は近隣に福岡都市圏がある。万が一の際には福島以上の被害も想定しておかなくてはならない。また、今回は3、4号機の申請となったが、既存の1、2号機の取扱も不明である。1号機は1975(昭和50)年に、2号機は81(昭和56)年に運転を開始したものであるが、その劣化が指摘されている。放射線による脆化(※)が指摘されている。
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※金属は一定の温度以下になると、粘りがなくなって衝撃に弱くなる。そのしきい値を脆性遷移温度という。金属が中性子線を浴びると、この温度があがる。玄海原発1号機に関しては、その温度が90℃を超えており、2009年4月時点の試験では98℃。運転中の原子炉の炉心は高温なので、脆性遷移温度を上回っているが、この温度を下回ると、金属は壊れやすくなる。
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