<パク・クネ大統領の手腕に不安感>
パク・クネ氏は13年2月25日に新大統領に就任した。その政権公約は、財源の問題や産業構造の問題から、実現できない可能性が大きい。パク政権の重点政策は、(1)経済民主化と創造経済を標榜する「経済復興」、(2)住居・教育費負担を軽減しカスタマイズされた福祉を進める「国民の幸福」、(3)文化コンテンツを育成し芸術活動を支援する「文化興隆」、(4)安全保障対応力を強化する「平和統一の基盤構築」であった。
では、キーポイントである「創造経済」とは何か――。未来創造科学部を新設し、「創造性を韓国経済の核心価値とし、科学技術とICT融合を通じて産業と産業、さらに文化が融合し、新しい付加価値を創出し、雇用を作り出す経済」と説明されている。
しかし、この根幹をなす技術技術に関連する韓国の貿易収支は、OECD中で最下位の34位にある。いまだ道通しの立たない国家目標だ。
今年の予想成長率は2%台にとどまっている。輸出依存度が50%もあり,世界経済に影響されやすい産業構造に起因していると言える。サムスン電子、LG電子、SK、現代自動車の4社の売上高がGDPの50%に相当する。これら大手財閥企業が韓国経済をリードしているが、2013年第1四半期の大手の決算では、サムスン電子以外の現代自動車、LG電子、ポスコ、SKテレコム、現代重工業、大韓航空などが軒並み減益となった、「サムスン1強」時代の到来は、韓国経済の危機局面でもある。
韓国上場企業全体の売上高と営業利益は、昨年1月から9月にかけて、前年同期に比べて小幅に増加した。しかし、これもサムスン電子を除いて計算するといずれもマイナスだった。内需不振とウォン高で、大半の企業が売上高と純利益を減らしたのだ。代表的な輸出業種となる電機・電子(IT)、自動車、鉄鋼、石油化学、造船などの収益性が悪化した。ウォンの対ドル相場は昨年9月末に1ドル=1,070ウォン台に上昇し、11月2日には前週末比1ウォンのウォン高ドル安となる1ドル=1,057.2ウォンをつけた。
赤字を計上した企業は24.8%(152社)で、昨年の23.1%に比べ拡大した。4社のうち1社は赤字を計上したことになり、世界的な金融危機に見舞われた08年(26.1%)以来の高水準となった。
それにもかかわらず、全体的には企業の業績が大きく悪化していないように見えるのは、繰り返しになるが、サムスン電子が海外市場で快走を続けているためだ。サムスン電子を除くと、上場企業の売上高は前年同期比1.32%減、営業利益も2.65%減となる。当期純利益の減少率も12.46%から22.20%に拡大する。IT業種もサムスン電子を除くと業績が悪化した。
<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授を歴任。2007年4月から大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。
メールアドレス:simokawa@cba.att.ne.jp
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