<満足度の高い外国人技能実習生制度へ>
内閣府の産業競争力会議の雇用・人材分科会でも、榊原委員(東レ会長で次期経団連会長)からは「5年以上への延長」を求める意見が出されている。それには理由がある。現在の3年の実習期間では熟練度が限られるため、技能の高度化を求める実習生は日本から自国に帰国した後、さらに中国や韓国にわたり、日本で学んだ技術の応用とさらなるレベルアップに取り組んでいるケースが増えているからだ。これでは、実質的な技術流出と言わざるを得ない。
雇用保険に関しても問題が指摘されている。何らかの事情で実習を中断せざるを得なくなった場合には、帰国が義務付けられているため、その意味でも、この制度には失業という概念はあてはまらない。たしかに、実習先の企業が倒産した場合には失業保険を受け取れるというが、これは技能実習という制度の本来の目的を逸脱したものではなかろうか。失業するような状況に追いやることは、この制度にあってはならないはずだ。
大半の実習生は月平均12万円という限られた給与の多くを母国への送金に当てており、日常生活は決して楽ではない。できるだけ経済的な負担を軽減させ、日本での技能修得や日本社会の良き理解者になってもらうよう、一層の工夫が必要だ。日本人の持つ職業倫理観を修得してもらうことが、今後、日本からのインフラ輸出やスマート・シティ構想を海外展開する際にも、現地での協力者の拡大につながるに違いない。こうした点を踏まえ、法務省や厚労省では「技能実習生制度に関しては、2014年半ばをメドに見直しの方向性を出す」とのこと。
我が国で学ぶ留学生は中国、韓国、ベトナムが御三家。前回紹介したように、技能実習生は中国、ベトナム、インドネシアがトップ3。中国、韓国と我が国との外交関係が戦後最悪と形容されるほど冷え込んでいるとき、こうした国々からの留学生や実習生の存在は、重要さを増している。留学や実習生のOB、OGを含め、彼らの経験や人脈を活かすことは我が国にとって最も身近な国際関係改善策となるだろう。日本にとって海外市場を開拓するうえで、こうした技能実習生や留学生を活かさない手はない。そのためにも、満足度の高い外国人技能実習生制度への進化が必要である。
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
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