<対外的な経済政策で後手を踏むパク政権>
韓国が恐れるのは、空洞化とウォン高からくる日本型不況である。現在の対ドルの為替レートは1ドル=100円を超える水準だが、野村証券などの見通しによると、1年後には110円台の円安になるとの見方が強い。海外市場で自動車、鉄鋼、電子など韓国企業と激しく競争する日本企業にとって、円安は価格競争力を高め、韓国企業に打撃を与える。
モルガン・スタンレー、BNPパリバなど大手投資銀行9社が提示した1年後のドル・円の予想平均も、1ドル=110.89円だった。
自動車業界が競争を繰り広げる米国市場で、2013年1~10月にトヨタ自動車は前年同期比8.1%増の186万7,000台、ホンダは8.5%増の127万4,000台、日産自動車は9.1%増の103万2,000台を販売した。一方、現代・起亜自動車グループの販売は同期間に0.9%減の105万8,000台にとどまった。日本のライバル社がほぼ10%の販売増加を見せる一方、韓国勢は後退した。
パク政権は、対外的な経済政策でも後手を踏んでいる。韓国政府は13年10月29日に環太平洋連携協定(TPP)交渉に参加する意欲を示したが、すでにタイミングを逸したとの声が国内でも強い。
韓国は今後、国内の手続きを踏んでから参加国の承認を得なければならない。日本は11年11月に交渉参加を宣言し、13年の4月に参加国に承認されるまで1年半近くかかった。消息筋は「年内妥結を目指す米国が途中での交渉参加は物理的に難しいということを示した」と解説する。
TPP交渉の年内妥結こそ実現しなかったが、韓国が途中から交渉に参加するのは容易でない。ワシントン在住の消息筋は、韓国にとって最悪のケースとして「交渉から排除され、韓国の立場がほとんど反映されないまま、ほかの参加国が合意した結果を受け入れるか拒否するかの二者択一を迫られること」と指摘する。
<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授を歴任。2007年4月から大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。
メールアドレス:simokawa@cba.att.ne.jp
※記事へのご意見はこちら