九州全体を網羅する軌道。その主役と言える存在が九州旅客鉄道(JR九州)だ。国鉄の分割民営化にともない生まれた同社は、当初より鉄道事業での苦戦が予測されていた。そんななかでも営業段階で利益を計上するに至り、現在も株式上場に向けて努力を重ね続けている。JR九州の行動から見える企業目的は、まさに「九州浮揚」である。地域を活性化させて人の動きを生み出し、鉄道業を守り続ける。その陰には多くの工夫と努力が払われているようだ。
<鉄道事業は当初より赤字を見込む>
逆風のなかでの出帆を余儀なくされたJR九州。大都市もなく、新幹線もない(山陽新幹線はJR西日本が有している)。赤字路線も多くある状況での鉄道事業の経営は、1987年の設立当初より予測されていた。分割民営化するためには、できるだけ旨みを残す、もしくは醸成できる環境をつくらなくてはいけなかった。そのため、東日本、東海、西日本には債務を引き継がせ、北海道、四国、九州には経営安定化基金を用意した。強いところにはマイナスを、弱いところには補助をつけたのである。九州エリアには経営安定化基金として3,877億円が用意された(この基金は、元本をそのまま何かに使うことはできないが、運用益を得ることはできる。その収益は今もJR九州の大きな支えとなっている)。スタート地点でできるだけフラットに整備されたとしても、それはエリアの持つ特性を変えるわけではない。赤字が懸念された地域は、やはり赤字が懸念され続けることになるのである。
エリアの強弱が明確にわかる指標として、株式の上場を見てみよう。旅客鉄道6社のうち、株式上場されているのが3社。1993年にJR東日本が、1996年にJR西日本が、1997年にJR東海が、それぞれ株式を上場している。一方、当初より経営の厳しさが懸念されていたエリアで鉄道事業を行なうJR北海道、JR四国、JR九州の各社は今も独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の100%出資となっている。つまり、完全なる自主独立が完成したとは言えない状態のままなのである。現在、JR九州は株式の上場に向けてさまざまな挑戦を続けている。
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