TPP(環太平洋経済連携協定)が暗礁に乗り上げている。22日からシンガポールで開催された閣僚交渉合意がまとまらなかったためだ。
安倍首相は27日の衆議院予算委員会で、4月のオバマ大統領の訪日までに合意に達するかとの自民党議員からの質問に対し、「あらかじめ期限を切るのは、自らの手を縛り、足元を見られる可能性がある。期限を切ることはすべきではない」と答弁した。
しかし、自民党内は、同党の議員連盟「TPP交渉における国益を守り抜く会」(森山裕会長)に250名を超える議員が加盟しており、「聖域なき関税撤廃は、党決議に反する」と慎重・反対が圧倒的である。政府が、交渉参加の際に取り交わした「秘密保持契約」を理由に、ほとんど交渉内容を明らかにしようとしないことへの不満も根強い。そのため、安倍首相や菅官房長官など一部を除いて、交渉そのものに消極的といってよい。
TPPは関税ばかりではなく、金融や医療サービス、知的財産権、公共事業といった非関税障壁の撤廃なども焦点になる。安倍首相は、「国益を守る」と繰り返すが、米国の年次改革要望書に基づいて郵政民営化などが行なわれ、過去の日米交渉では、日本の国益が一方的に損なわれてきた。TPPはグローバル大企業だけが儲かる仕組みだと左右両翼の有識者から批判が多い。
自民党は、支持団体の農協や日本医師会などの声を受けるかたちで、昨年7月の参院選公約では「TPPなどの交渉は、国益にかなう最善の道を追求する」としており、あくまで原則を譲らない米側への批判や不信の声が高まっている。
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