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コダマの核心

弾けたビットコイン・バブル(後)
コダマの核心
2014年3月 4日 07:00

<サウスシー・バブルと類似>
 "ビットコイン・バブル"は、古典的なバブルとして有名な"サウスシー・バブル(南海泡沫事件)"と類似している。ビットコイン・バブルは「未来の通貨」の発明から生まれたが、サウスシー・バブルは株式会社というものの発見によって生じたからだ。株式会社はイギリスではそれより100年以前からあったが、突然、金融界や経済界の新しい投機対象として登場した。

bitcoin-image02.jpg サウスシー・カンパニー(南海会社)は1711年に設立された。オークスフォードの伯爵であったロバート・ハーリーの霊感によるものだ。代書屋であるジョン・ブラントが加わった。だが、架空の会社であり、ハーリーの想像のなかに存在するものだった。
 サウスシー・カンパニーは、政府債務の引き受けの増額と引き換えに、多くの株式発行が許可され、それが大衆に提供された。
 1720年、イギリスの大衆は、株式会社の株式がカネになることを初めて体験した。サウスシー・カンパニーの株価は、1720年1月には128ポンドであったのが、3月には330ポンド、5月には550ポンドとなり、6月には890ポンドへ上がり、夏には1,000ポンドにまで上昇した。

 イギリスにおいて、これほど多くの人が突然金持ちになったことはそれまでなかった。株式を手に入れるだけで、努力することなしに金持ちになっていくのを見て、この流れに参加しようと殺到する人が増え、それがまた株価上昇に拍車がかかった。

 1720年7月、政府が待ったをかけた。バブル法が制定され投機を禁じた。バブルは崩壊。株価はあっという間もなく暴落。多くの破産者を生み出した。
 犯人探しは容赦ないものであった。その頃ジョン・ブラント卿となっていたブラントは、投機で損した人からロンドン路上で撃ち殺されそうになった。関係者の多くが刑務所行きとなった。

<1ドルで取引されていたコインが1,000ドル超に暴騰>
 「未来の通貨」が謳い文句のビットコインは、ドルや円など世界の主要通貨と交換できる。円相場と同じように、ビットコインの相場は、刻一刻と変動する。ほんの数年前まで1ビットコイン=1ドルとほとんど無価値で取引されていたが、キプロスの預金封鎖を契機に、13年に入ってから俄然注目を集めるようになった。

 以降、ビットコインは投機対象となる。12年末に1ビットコイン=13ドルから2013年10月初旬に130ドル、そして12月初旬には1240ドルまで急騰した。
 価格高騰でコイン長者が多数誕生した。著名投資家のウィンクルボス兄弟は200ドル台のときに1,100万ドルを投資。「将来は100倍以上の市場になる」とブチ上げた。たった4日間で300万ドル儲けた会社もあったと海外メディアは報じた。
 日本では利用者は極めて少なかったが、米国では13年はビットコイン・バブルに沸き返っていた。

<ビットコイン・バブルが崩壊>
 ビットコイン・バブル崩壊の引き金を引いたのは中国政府である。13年12月5日、中国人民銀行は、金融機関に対し、ビットコインを使った金融サービスの禁止を通達し、通貨として流通させない考えを伝えた。
 中国政府が強硬策をとったのは、富裕層がビットコインを用いて資産の海外流出を続ければ、中国という国家の存立基盤が揺らぐことを恐れたからだ。中国では、富裕層がリスクを分散させるために、海外への資産流出が深刻な問題になっている。
 これにより、ドルに対するビットコインの交換価値が急落した。12月18日には541ドルにまで急落。12月初旬の1,240ドルから半値以下の大暴落である。

 今年2月7日、マウント・ゴックスはハッカーの大規模なサイバー攻撃を受け、ビットコインの引き出し(換金)を停止した。ビットコインの価格は2月21日に一時100ドルを割り込むまでに急落した。
 そして2月28日、マウント・ゴックスの経営が破綻。ビットコイン・バブルは崩壊した。火傷を負った投機家が続出。米投資会社フォートレス・インベストメントは、保有するビットコインについて、13年末時点で370万ドル(約3億7,000万円)の評価損が生じたと公表した。大手の投資会社がビットコインの損失を公表するのは初めてだ。

 フォートレスは昨年、2,000万ドル相当分のビットコインを購入した。ビットコインの価格は2月以降、下げ足を強めており、評価損は800万ドルに膨らむと見られている。
 マウント・ゴックスに2万5,000ドル(250万円)相当のビットコインを預けていた米国人男性が、連邦地裁に損害賠償などを求めて訴訟を起こした。米国では集団訴訟に発展する可能性があると報じられている。もちろん、タダ同然の価格で購入し、高値で売り抜けてボロ儲けした人が名乗り上げることはない。
 バブルが崩壊し、バブルに踊った人々のいつもながらの恨み節である。サウスシー・バブルから300年経っても、バブルに熱狂する人間の心理は少しも変わっていない。それにしても、巨額なビットコインは、どこに消えたのか――。内部犯行説が出ている・・・。

(了)

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