<いざ福岡から東京へ>
「そうだ!東京で一旗揚げよう!」――こう思って、東京の大学に進学したり、企業に就職したりする人も多いだろう。また、地方から本社移転する中小企業も少なくないと思う。筆者もその口で、福岡で修業を積み、フリー記者として腕試しのつもりで昨年11月から裸一貫東京にやってきた。
昨年9月7日、ブエノスアイレスで開かれた第125次IOC総会で東京が「2020年オリンピック・パラリンピック」の開催都市に選ばれた。「お・も・て・な・し」のフレーズは流行語大賞を獲り、明るい未来に向かって東京はまい進するかに見えた。しかし一方で、猪瀬直樹前東京都知事が徳洲会問題で12月に突然の辞任。都政に暗い影を落としている。そんな最中の昨年11月、福岡から上京したいちフリー記者の目から見た現在の東京像を、最近の取材と織り交ぜながら報告する。
東京に居を構えるのは今回が初めてだが、大学時代は研究材料集めで、また前職では出張取材で何度か東京を訪れたことはある。そのたびに何となく「懐の深い都市だな」という印象を受けていた。
それもそのはず、まず都市部の人口が圧倒的に違う。2013年10月1日現在、福岡市約150万人、対する東京23区は約906万人。筆者が現在住んでいる八王子市は、よく「すごく遠いところに住んでいるね」と田舎扱いされる街だが、それでも同9月末現在で約56万人と福岡県久留米市の倍近い。
福岡は、天神や博多では昼間それなりにビジネスマンは多いし、車も渋滞しているが、東京はその比ではない。人種も多彩で、取材の合間にカフェに入れば英語での会話がそこかしこで聞こえてくる。こうした多士済々、百人百様の人間の受け皿として必要になるのが、高層ビルや鉄道、道路などのインフラだ。
福岡市中心部は、福岡空港があり上空を飛行機が航行するため、天神は高さ65~75m、博多駅やその周辺および中洲などは高さ50~60mの制限がある。副都心の香椎・千早地区は130m、西新・百道地区は150mのため、都心から離れるほど建物が高くなる景観になる。
一方の東京は、土地の利用方法によって高さ制限は異なる。たとえば緑地が多く歴史的な遺産があるような場所は「風致地区」となっており、基本的に高さが15mに制限されている。高度利用に関してはスカイツリーの634mがダントツだが、オフィスビルも150m以上の高層ビルが都内にひしめいている。外見ひとつとって見ても、規模感にかなりの差がある。
また、東京では「車は不要」というくらい鉄道網が充実している。ざっと挙げるだけでも、JR、地下鉄(東京メトロ)、京急、京王、小田急、東急、ゆりかもめなどなど。路線も充実し路線図も10年前と比べて大きく変化しているが、電車で眺めるたびにその複雑さに辟易するとともに感心もする。
福岡ならJR、西鉄、地下鉄で事足りるので乗り換えで迷うことはほとんどないだろう。フライトに関しては、東京も羽田空港はそれほど遠くないが、福岡空港の利便性には遠くおよばない。
東京の道路網は、とくに首都高環状線内に入ると、おのぼりさんの目には複雑怪奇に映るだろう。「大きな災害があったとき、いっせいに郊外へ逃げようと思っても大混乱する」と思わざるを得ない。筆者も一度、首都高および都心部一般道の両方のドライブに挑戦してみたが、道を知らなかったことを差し引いても気楽に走れたのはお台場周辺くらいだった。
逆に福岡は、取材などで少し遠出するにも車がないと不便で、車購入後は自ずと公共交通機関の使用頻度も減ってきた。
その首都高も、1964年の東京オリンピックに合わせてつくられたため、老朽化が課題となっている。国土交通省の「首都高速の再生に関する有識者会議」がまとめた資料では、開通から40年以上経過しているのは都心環状線や目黒線など全体の29.7%に上るという。30~39年という路線も合わせれば5割近くに達していた。この架け替え工事がこれから進んでいくだろう。中央環状品川線が14年度末に開通予定で、これで中央環状線が全線開通することになる。また、都心部の渋滞解消のため外環道や圏央道なども整備が進んでいる。
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