2013年6月、福岡市中央区今泉にオープンした「さが牛賓館WATAYA」は、同年10月末をもって閉店。経営していたのは、60年以上の歴史を誇る嬉野温泉の老舗旅館「和多屋別荘」の女将・小原真弓氏。老舗女将の店の半年以上持たずの閉店に、訝しむ声は少なくはない。
同店では、とくに宣伝も行なわず、ひっそりとオープンし、嬉野温泉名物の湯豆腐や佐賀牛のしゃぶしゃぶ、ステーキなどを提供していた。しかし、場所が分かりにくかったことと、価格帯が高かったこともあり、客足は伸び悩んでいたようだ。500円佐賀牛カレーを目玉商品としたランチ営業や近隣への佐賀牛弁当の配達なども手掛け、顧客拡大に努めていたものの、残念な結果に終わってしまった。
「和多屋別荘」は、1950年11月に創業し、それまで木材卸などを手掛けていた創業者・故小原嘉登次氏が、当時別の経営者が経営していた「和多屋」の旅館経営権を譲受し設立。嘉登次氏は、47年に佐賀県議に初当選、63年には佐賀県議会議長となり、以後県議を44年、県議会議長を26年務めた佐賀県政の重鎮でもあった。その後、和多屋別荘は嘉登次氏の三男・健史氏が引き継ぎ、健史氏の後妻の真弓女将とともに切り盛りしていた。
現在も、店舗跡地はそのまま残っている。
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