【特別取材】カンボジア経済視察 イオンカンボジア
アンコールワットに地雷とポル=ポト。そう、その国はカンボジア。近年は積極的な外国投資の呼び込みと安価で豊富な労働力を背景に安定した経済成長を遂げている。日本企業の進出が相次いでいる同国を視察し、経済を中心に知られざるカンボジアの現状と魅力を報告する。
<最貧国でも勝負できる>
2012年12月に着工し、今年6月20日のオープンに向け、イオンカンボジア1号店「イオンモールプノンペン」の建設が急ピッチで進んでいる。現在は外装工事を終え、テナントの引き渡し、内装工事にと事務所にはひっきりなしに関係者が訪れている。今年1月にはイオンベトナム1号店が開業し、旧正月の連休には1日15万人が来場。イオン史上最高を記録したことで、カンボジアでの開業も期待される。今回、イオンカンボジア事務所を訪れ、責任者の簑原邦明氏に聞いた。
「カンボジアは経常赤字国で、ODAと外国投資がなくなると破綻する国。つまり、外国投資には他国にみられるような規制を設けておらず、周辺諸国と比較しても、群を抜いて自由度が高い」(蓑原氏)。これがカンボジア進出の理由だ。
最貧国のひとつであり、国民の約9割が月収400ドル以下の世帯だが、同施設の5キロ圏内には高所得世帯が多いことがわかった。プノンペン市街中心部は商圏としては別世界だと言える。「月収400ドル以上の世帯を調べたところ、食材や外食に使う金額が非常に高く、貯蓄をあまりしない国民性がわかった」(蓑原氏)。そのため、同施設ではテナントの構成を変え、物販よりも飲食の店舗数を増やしている。飲食店ゾーンでは、12カ国におよぶ多国籍料理を取り揃え、幅広いニーズに対応。家族全員で外食する国民性を考慮し、日本食はフードコートに配置した。「フードコートなら家族1人ひとりが好きなものを注文できる。若者は日本食を知っているが、年配の方にはまだ認知度が低い。家族全員で日本料理店に入る可能性は低い。そういうことも想定しながら、配置を決めた」(蓑原氏)。
またアミューズメントも充実している。映画館にボーリング場、アイススケートにフィットネスジムも揃え、食とエンターテイメントに重点を置いた内容になっている。
「弊社では20万人商圏に1施設が適当だと考えている。計算上では、消費者になりうる人口は70万人。最貧国といえども、十分チャンスがある。今後、2号店もプノンペン市内に開業できればと思う」
車が増え、道路の両端には日本で言う違法駐車が当たり前となっている。市街地には駐車場を備えた店舗がほとんど見られない。加えて年平均気温30度のなか、冷房を完備した巨大商業施設は見当たらない。これらに対応したイオンカンボジア1号店の開業。同社のみならず、地域住民も大いに期待している。
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