福島第一原発事故から3年を前にした3月9日、福岡市で脱原発を求める「さよなら原発!福岡集会」が開かれ、1,000人以上が参加。集会後、天神周辺をデモ行進した。
集会では、福島県郡山市から福岡県内に避難している橋本希和さん(23)が震災と原発事故当日から避難した日々を振り返りながら、「福島を忘れないでください」と訴えた。「春にはサクラが咲き、夏には深い緑が青空に映え、秋には紅葉狩りができ、冬には雪合戦をしたり雪だるまをつくったり。でも人の心は痛み苦しんでいます。恐怖心を隠している人が大半だと思う」と述べ、外から見た限りでは復興が進む福島の実態に触れた。「いまだに仮設住宅暮らしで4年目を迎え、何をしているのかと怒りを感じます。あきらめずに目をそむけずに立ち向かっていかなければいけません。ともに考え、思いを伝え、踏ん張っていきましょう」と呼びかけた。
乳幼児2人の被曝を避けるために東京から福岡県内に避難しているあやもさん(31)=仮名=は、「脱原発は、脱被曝とセットでないといけません。食べる物(の放射能汚染)をちゃんと考えてあげてください」と訴えた。
デモ行進といえば、普段は、明治通りや国体通り、渡辺通りなど主要な大通りを歩くが、この日は違った。
約100人ずつの11のコースに分かれて、天神周辺の天神きらめき通りや警固神社表参道、天神サザン通り、新天町東通り、メルヘン通り、マロニエ通り、天神西通り、ふれあい広場通りなど、片側1車線の路地も細かく歩いた。
「普通のデモでは、市民が遭遇するのは一瞬かもしれない。その確率を上げよう」と企画されたもので、名付けて"オキュパイ(占拠)・デモ"。あたかも天神の街全体のどこにいてもデモが行進しているかの様相に包まれ、「脱原発」が天神周辺を占拠。「世界を変えよう、ここから変えよう」などの呼びかけが天神から大名周辺のあちこちで聞こえ、道行く市民が注目していた。同じ道路を両方向からデモがすれ違うなど、デモ同士が遭遇する場面もみられた。
福岡市の会社員の女性(33)は、脱原発の集会には前回に続いて参加した。「前回はデモのなかの人は脱原発の一体感があったが、大きな道を通ったので、見ている人と距離があって、声が届いているのか不安だった」と言う。「きょうは、同じ高さを、近い距離で歩いて、微笑んでくれているのを感じた。私たちのアピールを聞いてくれそうで、希望を持てた。新しいかたちだと思った。私ももっと何かやりたい気持ちになった」と感想を述べた。
デモでは、楽器を演奏したり、音楽を流した。「原発反対といっても、聞いてもらえないと意味がない。楽しいこと、共感できることでないと通じない」という気持ちがあるからだ。広川町から参加した男性(35)はサックスを演奏。「再稼働にはもちろん反対。福島の住民がまだ苦しみを抱えながら暮らし、13万人近くが避難し、戻っていないのにおかしい」と語っていた。
集会では、主催者を代表して、「原発とめよう!九電本店前ひろばテント」の青柳行信氏が「私たち1人ひとりの歩みは確実に原発を止めてきた。日本全国、九州の玄海、川内原発を止めて2年過ぎた。清々しい空気が吸える、原発なしで暮らしていけると感じてください。ともに原発を止めよう」と呼びかけた。
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