佐賀県唐津市に幅500メートル、長さ4.5キロメートルにわたる松原がある。面積は220ヘクタール、玄界灘に向き合うクロマツを中心とする松原は「虹の松原」と呼ばれている。松原といえば白砂青松のイメージが強烈だが、自然の移り変わりや松くい虫による被害が景観を蝕んでいる。虹の松原では地域発信による松葉の人工腐植化計画が進められている。かき集めた松葉等を人工的に腐植し、フルボ酸液を産生、シャンプーなどのアメニティグッズとして商品化する計画だ。
<燃料革命にともなう管理放棄>
虹の松原は三保の松原(静岡)、気比の松原(福井)と並んで日本三大松原に数えられている。さらに日本三景などと並んで特別名勝にも指定されている景勝地。ただ、大東亜戦争の戦前には敵前上陸の演習場としても利用されたのを知る人は少ない。
松原は古くから防風林や防砂林として人の生活を守り、落ち葉や枯れ枝はかき集められ、燃料として人々に用いられてきた。人との共存が図られることで、松の手入れも自然のなりゆきとして行き届いていたのである。
ところが戦後、燃料革命がもたらしたライフスタイルの変化により、松原の管理が行き届かなくなり、広葉樹林化やクロマツの過密林化が進んだ。虹の松原では2008年、維持管理の見直しに行政が着手、アダプト制度を導入し「マツの単相林化」、「白砂青松の復活」を目指してNPO団体やボランティアなどの管理参画も行なわれ、松原の再生・保全活動が開始された。
<苦戦するボランティア>
虹の松原では1年間で1ヘクタール当たり約5tの落ち松葉が発生しており、松原全体では1,000tにのぼる。再生・保全活動では、「労働力確保」、「運営費確保」、「松葉処理」などの課題も浮上している。何よりも、松葉かきを継続的に実施するにはボランティアだけでは負担が大きいとともに、かき集めた松葉の処理が問題となった。かき集められた松葉は、たばこ農家に苗床や肥料として利用される程度だった。回収・利用されないまま松原に積み上げられた落ち葉の山は、しだいにボランティアの気持ちを萎えさせた。枝を原料とした燃料用ペレットの製品化を目指したものの、生産効率の問題や消費先の課題もあり実用化には至っていない。
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