<「バランス・オブ・パワー」を超える発想>
リアリストが懸念する経済軍事的な対立を回避しつつ、リベラリストが描く経済共同体の実現に横たわる困難な条件を冷静に判断し、日本が主導的な役割を果たすことで、この地域における平和と安定、そして繁栄がもたらされる。そうした積極的な平和経済外交を日本は模索すべきだと思う。今こそ、「バランス・オブ・パワー」を超える発想こそが求められる。
その意味でも、防空識別圏をめぐって高まる日中間の緊張を解く工夫が求められる。
グローバルな緊張緩和に向けて、米中間のトップ同士が頻繁かつ徹底した接触を重ねているのに比べ、我が国の対応はあまりに腰が引けている、と言わざるを得ない。たとえば、オバマ大統領と習近平国家主席はカリフォルニアで2日間、8時間の直接対話をこなし、バイデン副大統領は習主席と北京で5時間の協議に臨んでいる。いずれも、個人的な信頼関係を築くことで、最悪のシナリオを回避しようとする試みに他ならない。
<相手の窓を開ける工夫こそ>
一方、我が国と中国とのトップ同士の対話はほぼ皆無に近い。安倍総理は習主席とたった数分の挨拶をしたことがあるだけ。岸田外相は王毅外相とは会ってもいない。水面下で打開策を模索する動きでもあればまだしも、そちらも凍りついたままである。
安倍総理は「対話の窓は常に開けてある」と繰り返しているが、「相手の窓を開ける」工夫を凝らす必要があるだろう。日中双方にとって、環境やエネルギー問題が一層深刻さを増す2014年がそのきっかけとなることを願うものである。
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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
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