<日中で危機管理メカニズム必要>
――集団的自衛権の行使は米側の要求でもあるはずだが、今の東アジア情勢で米国が一番懸念しているのは何か?
山崎 米国が非常に警戒しているのは、日中関係、日韓関係がこじれるということは、とりわけ日韓関係がこじれると、韓国を中国に追いやることになるから、北東アジアの中で日本の孤立化を招く。北朝鮮も日本に対して敵意を持っており、日本の孤立化の要因は常にある。日本が孤立すると、在日米軍の地位があやふやになると恐れている。もう一つは、集団的自衛権の行使を認められることになれば、安保条約第6条がおかしくなることだ。日本が米国を防衛できないので、その代償として基地を提供するとなっている。基地を置いて、極東の平和と安全のための活動をするとなっているのが、できなくなる。集団的自衛権の行使をするなら、対等になるから日本に基地を置かないでくれと、日本側が要求し安保条約の再改定問題になるのを米側は懸念している。今は、日米同盟は対等でないから、日本が基地を提供している。日本の右翼思想家から日米対等論がだんだん出て来たので、そこまで米国は読んでいる。
集団的自衛権の行使をしてくれるのは大変結構だと米国は一応言うんだけど、その範囲がごくわずかであれば、柳井さんのような話であれば、限定的小規模なものであれば容認できるけど、憲法改正と同じレベルで全面的に認めるということは――憲法改正は集団的自衛権を有すると書くから――米国と対等になる。その結果日本が再び戦前のような軍国主義になるのを恐れている。軍事力の行使は限定的なものとする防衛政策上の歯止めが必要だ。
今は、どのように日中関係の修復を図るかが先決であって、そのうえで、日中首脳間で相互不可侵、平和共存の原則を再確認して、危機回避のための危機管理システム(メカニズム)を日中間につくることが必要です。中国海軍の戦艦が日本の自衛艦にレーダー照射したことがあるが、そうことはやめにして、もし現場でやったら、直ちに人民解放軍の中央司令部に情報が伝わって、司令部から当該艦船にやめろと指示が出せるというメカニズムをつくる必要がある。
<プロフィール>
山崎 拓 氏(やまさき たく)
自由民主党元副総裁、元幹事長、元政調会長、元建設大臣、元防衛庁長官など歴任。1936年生まれ。福岡県立修猷館高校卒業。早稲田大学商学部卒業後サラリーマン生活などを経て、67年に福岡県議会議員に当選。72年の総選挙で衆議院議員初当選以後、12回当選。著書に『2010年日本実現』『憲法改正』など。現在、政策集団「近未来政治研究会」最高顧問。
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