【特別取材】カンボジア経済視察 シアヌークビルの経済特区
アンコールワットに地雷とポル=ポト。そう、その国はカンボジア。近年は積極的な外国投資の呼び込みと安価で豊富な労働力を背景に安定した経済成長を遂げている。日本企業の進出が相次いでいる同国を視察し、経済を中心に知られざるカンボジアの現状と魅力を報告する。
<対照的な経済特区>
港町シアヌークビルでは、2つの経済特区を視察した。ひとつは日本の資本、ひとつは中国の資本が投入された経済特区だ。同じ国の経済特区といえども、運営者によって特徴に大きな違いが出ていたのは実に興味深かった。
まず港に隣接したシアヌークビル港経済特区(SPSEZ)を視察した。日本のODA事業として開発された高水準のインフラが特徴である。港湾に沿って整備された経済特区は海運には絶対的な強みを持つが、入居しているのはまだわずかに3社のみ。港は拡大成長しているし、設備も充実しているが、企業を呼び込みきれていない。
対して、中国資本のシアヌークビル経済特区(SSEZ)は港から車で約30分と離れているが、空港には近く、港、空港、鉄道とのバランスのよさが特徴だ。担当者によると、すでに54社が入居済みで、5年以内に300社を目指すという。区内には商業施設やホテル、居住区なども計画され、将来的にはそこにひとつの街を作るといった構想だ。
両者の勢いは歴然としている。規模はずいぶん違うが、ここまで大差がつくのは結局、入居費用であろう。日本の経済特区が1m2あたり65ドルであるのに対し、中国の経済特区は1m2あたり27ドルと日本が約2.5倍も高い。中国側は視界に入らない下水処理にはそれほど関心を持っていないようだ。視察団から下水処理に関する質問が出たが、「今後整備していく予定だ」という返事しかなかった。本音をいえば、環境は二の次なのだろう。
利を求めるのか、持続的な発展を目指すのか。2国間の意識の違いがはっきりとわかった。
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