<新事業開拓に死活を>
意外に思うかもしれないが、1960年代の韓国の経済水準は、アフリカのケニアよりも低かった。当時の国民所得(GDP)は100ドルくらいで、韓国戦争後の経済状態は悲惨なものであった。現在の国民所得は2万ドルなので、半世紀で200倍の成長を成し遂げたことになる。
70年代の韓国経済を牽引したのは、自動車、鉄鋼、造船、建設など重工業と建設産業であった。朴正照大統領の強力なリーダシップの下、政府が主導し、重化学工業を中心に、集中的に投資をした。それが基盤になって、88年度にソウルでオリンピックを開催するまでになった。
90年代は携帯電話、半導体など情報産業(IT)が急成長をして、産業全般を引っ張ってきた。アメリカから韓国人エンジニアを連れてきて、果敢な投資をしたのが、奏を効した。
しかし、成長が常識になっていた韓国経済にも、今はグローバル的な景気低迷という危機が訪れた。去年の4月のマッケンジーの報告書によると、「韓国経済は雇用の創出に失敗していて、とくに製造業では今後、雇用増加を期待できない」という指摘がされている。経済政策の専門家も口をそろえて、今後、韓国経済が今の危機を克服し、成長を続けるかどうかは新事業の開拓の如何に関わっていると言っている。
そのようななかで韓国の代表的な企業は、継続的な成長を維持するために体制整備に取りかかっている。既存事業の体質の強化を図りながら、新事業開拓に血眼に。一方で韓国国内では、今のところ未来に対する見通しについて楽観的な趣がある。
<ますます激しくなっているサバイバルゲーム>
三星(サムスン)、現代自動車、SK、LGなどの韓国を代表する大手企業は、積極的な研究開発投資で新事業を開拓し、グローバル的な景気低迷を突破しようとしている。
サムスンの悩みは、ギャラシー以降の新しいヒット商品の創出である。現在、世界1位の市場シェアを獲得しているスマホの勢いを、タブレットやウェアラブル機器にまで拡大させると同時に、それによって新事業を開拓することである。サムスンはとくにタブレットに大きな期待を寄せているが、その理由は、国内ではそれほどの結果を出すことができなかったが、世界的に見ればアップルに次ぐシェア2位を占めているため、今後の潜在力が大きいからである。
また、タブレットはそれ自体の販売に止まらず、自動車、家電製品との連携なども模索できるからである。今年、アメリカで開催された家電展示会であるCESで、サムスンはギャラクシーギアでBMWの電気自動車の制御を披露したりした。このように、新事業開拓のためのさまざまな試みをしているのである。
それだけでなく、別のかたちでの新事業開拓にも躍起になっている。過去3年間10億ドルを投じて、医療機器メーカーであるニュロロジカ、メディスンなど14社を吸収合併して、医療機器分野でグローバル的にトップに飛躍したいという計画を持っている。業界関係者は、「サムスンが持っているITデジタル技術と圧縮技術などを医療機器に応用すると、競争力は十分あるでしょう」と言っている。
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