福島第一原発事故で福岡県などに避難・移住した被災者の生活実態調査がまとまり、３月17日、発表された。避難者と支援者の交流や情報交換などを目的に活動している市民グループ「ふわりネットワーク・福岡」（芝野章子代表）が、福岡教育大学の西崎緑教授（社会福祉学）らの協力を得て、アンケート調査を実施したもの。60人からの回答があった。また、同大学学生により福岡、佐賀両県に避難している約15人に対してのインタビューによる聞き取り調査も行なわれた。
　そこでは、避難先との二重生活による支出増や転職・退職による収入源などのため、避難後の家計が苦しくなっている実態が浮かび上がった。家計が「非常に厳しい」は回答者の42％、「厳しい」は同43％に上った。
回答者の５割超が30代、４割が40代の子育て世代だった。また、避難前は、回答者の３分の２が夫婦と子ども世帯だったが、避難後は同居家族が母子だけの世帯が53％と過半数を占めた。九州への避難者に母子避難が多い特徴が改めて示された。避難前の居住地は、福島県を含む東北が13％、関東が83％だった。
アンケート調査は2013年５～９月に実施、インタビューは同年12月～14年１月にかけて実施されたもの。

　同日、県庁で記者会見した西崎教授は、「避難者は生活が苦しくなっており、貯金を取り崩している。貯金がなくなったらここで生活できなくなるとの不安を抱えている」として、支援の必要性を訴えた。
「母子避難が多いので、仕事を辞めたり、常勤からパートや無職になったため、保育所入所が困難になっている。避難対象区域からの避難には支援があるが、自主避難には十分な支援がない」と指摘し、「生活基盤のうち、住宅、保育所、職の３つに対して、優先順位を高めて支援してほしい」と要望した。
　避難者の多くが放射性物質による健康被害や内部被曝を心配し、食の安全に対しても敏感な状況を挙げて、「福岡では放射能（の危険）への感覚が（避難者に比べて）薄いので、食べ物への放射能汚染を気にするのが理解されにくく、モンスターペアレンツ扱いされることもある」と述べ、調査結果をまとめたブックレットを配布し、理解を広げたいとした。

　調査を担当した学生は、社会福祉士を目指しており、その現場実習を兼ねて、アンケートとインタビューを、どのような支援が可能か、地域に現在ある資源を活かした支援策を検討した。学生らはインタビューからわかった課題から、▽子どもの遊び場づくり、▽安全な食材情報マップ、▽リサイクルフリーマーケット、▽正確な情報発信・収集の場――の４つの支援策にまとめた。学生サークルや地域の社会福祉協議会と協力して、支援策の実践にも取り組む。
　会見には、インタビューにあたった学生18人のうち吉田圭那さん（21）、桂田和さん（21）＝いずれも同大教育学部福祉社会教育コースの３年生＝が同席した。
　吉田さんは「情報を得ようとしていている人と、そうではない人との差があると感じた。避難してきた人以外の人たちも、原発や放射性物質のことを知ってもらい、情報の底上げにつなげたい」と語った。桂田さんは「福島は離れているから関係ないと思っていたが、直接避難者の話を聞いて、自分も参加すべきだと思った。食の安全などの情報が避難者に手に入りやすいように、地産池消マップをつくりながら、避難者と地域住民とのつながりをつくっていきたい」と話した。

　調査結果は、「平和・共生ブックレット－原発事故から３年　九州に避難した人たちの今」にまとめ、300部発行。避難者のいる地域の小学校などの関係者に配布する予定。また、同大学のホームページからPDFファイルでダウンロードできる。

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