三菱地所レジデンスが東京・南青山に建設中の高級マンションで欠陥がみつかった問題で、施工業者である鹿島建設の全額負担で、解体・建て替えが行われることがわかった。欠陥工事のレベルが、補修で済むのか解体・建て替えしかないのか注目されていた。欠陥工事発覚後、三菱地所側が「原因者に応分の負担を求める」とコメントしていたため、鹿島の全額負担という結果が予想されていた。
<鹿島の欠陥隠し 三菱地所に報告せず>
三菱地所レジデンスが建設中だった高級マンションは、「ザ・パークハウス グラン南青山高樹町」。同社が手掛ける最高峰シリーズでは、第1号の予定だった。
「グラン南青山」が解体・建て替えという致命的な欠陥工事に至った経過を見ると、鹿島の隠ぺい体質が浮かび上がる。
発覚した欠陥工事は、スリーブ(配管用の貫通孔)の施工忘れや位置間違いと、それをカバーするためのコア抜きの際に鉄筋を切ったものだ。スリーブやコア抜きは、設備工事を請け負った関電工が担当した。
NET-IBの取材に対する三菱地所の回答によれば、鹿島がスリーブの施工忘れなどに気付いたのは2013年8月だったという。今回、ネット上の書き込みによって欠陥が発覚してからの調査で、三菱地所はその事実をようやく知ることになった。
一方、鹿島建設広報室は、取材に対し、「不具合について現場から社内外関係者への未報告が原因」と述べている。この回答を全面的に信用すれば、現場責任者からは三菱地所はもちろん、鹿島本社にも報告されなかったことになる。現場のミス隠しがあったということだ。しかも、コア抜きの際に鉄筋を切断したことも、三菱地所にはなんら伝えられることはなかった。
欠陥やミスを隠ぺいして、「知らぬ顔の半兵衛」を決め込んだのでは、発注者の三菱地所に対する契約違反、信義則違反は明らかだ。
<「秘書が」ならぬ「下請けが」>
鹿島は、コア抜きの際のミスについて、「当社現場所長は、鉄筋探査の上でコアボーリングを(関電工に)指示し、当初そのように施工されておりましたが、その後、関電工が鉄筋探査を怠り、コアボーリングを行ないました」としている。
鹿島の回答は、汚職政治家の「秘書が、秘書が」発言を彷彿とさせる。「俺はちゃんと指示したのに、関電工が怠った」と言っているようなものだ。
関電工はどうなのか。広報担当者は「当面事態の収拾に向かって努力することに全力をあげており、不具合を起こして申し訳ございません」と述べ、通常実施する鉄筋探査を怠った理由については歯切れの悪い回答に終始している。「調査中なので詳細な内容は控えさせていただきたい」というが、関係者からは、工期が迫っていたという背景があり、そうした中で誤って鉄筋を切ってしまったという話が出ているという。
鹿島の欠陥工事は、今回だけではない。
福岡県久留米市の「新生マンション花畑西」では、元請の鹿島と、下請の地場建設会社との間で、欠陥工事の改修費用負担をめぐって裁判になっている。その裁判で、鹿島側は、「一括下請」だったとして、「実際の請負工事の結果について責任を負うのは下請業者であり、下請業者の工事結果について元請業者が責任を負う事は、元請業者が得る利益に照らして元請業者にとってはリスクが高すぎる」と主張した。丸投げだから、元請けには管理監督責任は何もない、元請けは責任を負わないよという意味に読める。
下請けに責任を押し付ける点では共通している。鹿島の社内に巣食う「病根」は予想以上に深い。
鹿島社内の原因究明と責任の所在について、今後、社外の第三者も含めて、調査し公表して自浄能力を示すことが、鹿島と建設業界の信頼回復のためには、最低限必要だ。
<建設業界への信頼を裏切った鹿島>
今回のような欠陥工事があっても、内装が終わって、購入者に引き渡されてしまえば、地震によって倒壊するなど、よほどのことがなければ欠陥が表に出ない。消費者が見抜くのは困難だ。それをいいことに、欠陥を隠す施工業者が蔓延したら、建設業界全体の信用・信頼が失墜する。
もっとも三菱地所は竣工前検査などを厳しく実施している「チェックアイズ」を売り物にしており、今回の欠陥についても竣工前に必ず見つけられたと自信を持っている。鹿島であれ、ほかのスーパーゼネコンであれ、「不心得者」が出たとしても、三菱地所には今回のような欠陥隠しは通用しないのがせめてもの救いである。
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